進学や転勤のタイミングになると、新居を求めて賃貸住宅の物件を探し始める人も出てきます。
不動産屋で話を聞いていると、契約の際には火災保険の加入が必須といわれることがほとんど。
でも賃貸で本当に火災保険って必要なの?そもそも賃貸の火災保険って何?と疑問がたくさん出てきてしまう方もいるでしょう。
年間で1万円以上も支払うこともありますから、損をしないようにどんな保険なのかを知っておきたいですよね。
そこで今回は賃貸契約する際に加入する火災保険にフォーカスし、どんな保障内容なのか加入時の注意点や自分で加入するときの方法まで徹底的に解説していきます。
目次
賃貸住宅で加入する火災保険とは
賃貸住宅向けに加入する火災保険の特徴は、大きく分けて以下の2つに分類できます。
- 入居期間に発生した災害による部屋の損害を補償できる
- 3つの補償内容に分かれている
以下で詳しく解説していきます。
入居期間に発生した災害による部屋の損害を補償できる
賃貸住宅向けで発売されている火災保険は、入居期間中に発生した災害による部屋の損害を補償できます。
賃貸住宅であれど生活の拠点として利用するわけですから、火や電気を使うのは日常茶飯事ですから、火災が発生しないとも言い切れませんから部屋が燃えて大きな損害を発生させてしまうこともあるかもしれません。
ただし皆さんもご存じのように、家は人生で一番高い買い物といわれるほどですから修繕費用が多額になる可能性が。
大家さんに返すときに壊れた状態のままともいきませんから、高い修繕費用を捻出できるように火災保険に加入して保険金で修理を行うのです。
他人の部屋から出火して被害を受けても利用できる
賃貸住宅に住んでいる以上、他の部屋が火元になって自分の部屋まで燃えてしまうこともあります。
しかし火災発生時の損害賠償を火元の住人に請求することができない場合もあるんです。
日本には失火責任法という法律があり、火災が発生する原因に重大な過失が認められない場合、火元に住んでいた住人であったとしても周囲に対して損害賠償をしなくてもよいという法律があります。
つまり他人のせいで家が燃えてしまったとしても、誰にも修理代を請求できなくなってしまうのです。
自分で火災保険に加入しておけば自分が火元でなかったとしても、保険金が下りますので部屋の修繕を行えるのです。
3つの補償内容に分かれている
火災保険では「借りている部屋で火災などの災害が発生した場合の修理費用を補償してもらう」為にかにゅうする保険ですが、厳密にいうと以下の3つの補償内容に分かれています。
- 家財保険
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
以下で詳しく解説していきます。
家財保険で損害を受けた所有家財を補償
火災が発生すると燃えるのは部屋だけではなく、皆さんが所有している家電や家具などの家財も含まれます。
部屋の回復が終了しても家財がなければ元通りの生活を送ることなんてできませんよね。
賃貸用の火災保険の中には、家財が損害を受けたときに保険金が下りる家財保険があります。
加入している火災保険にこの保障がついていると、家財が燃えたとしても保険金が下りて買いなおすこともできます。
借家人賠償責任保険で部屋の損害を補償
借家人賠償責任保険は簡単に言ってしまえば、大家さんに対する補償で燃えた部屋を修繕する目的で利用できる補償です。
上述したように賃借している皆さんには、借りている側の責任として原状回復義務があります。
ただし失火責任法があるため過失が認められない火災に関しては、大家さんは損害賠償を請求できないため大きな損害を被ってしまうことになります。
借りる際に大家さんに対して損害賠償するための保険なので、賃貸契約の際にはこの借家人賠償責任保険の加入が必須となることがほとんどです。
個人賠償責任保険で隣人への損害を補償
個人賠償責任保険は生活しているうえで、火災以外で他人に対して損害を与えてしまったときの損害賠償責任を補償してもらえます。
例えば隣人の所有物を壊してしまったり、日常生活で相手にけがをさせてしまったときの治療費や弁償代などに利用できます。
また自分の部屋から水漏れが発生してしまった場合に、隣家に対して損害を補償できるため幅広く活用できます。
火災保険の加入は本当に必要?
火災保険の加入を入居の条件としている大家さんが大半なので、火災保険の加入は必要です。
仮に火災保険の加入を条件としていなかったとしても万一、火災が起きてしまった場合の回復費用を自己負担でまかなえる方は少ないでしょう。
なぜなら、原状回復するには多額の費用が必要になるからです。
以下で火災が起きてしまった際のリフォームにかかる費用の相場を紹介します。
(6畳)
部屋のリフォーム | ボヤ20~50万円 全焼90~200万円 |
住宅設備のリフォーム (ユニットバスやキッチンなど) | 20~100万円 |
フルリフォーム | 約500万円 |
全焼で支柱のみが残った場合 | 約1,000万円 |
上記のとおり、火災の状況によりますが原状回復するには多額の費用がかかります。
火災保険に加入しておけば、これらの費用を保険でまかなえるため安心です。
火災の原因は身近にある
総務省消防庁の調査(令和元年中)によると建物火災の51.3%が住宅火災となっています。
原因はコンロの消し忘れが最も多く、次に多いのがたばこの不始末です。
火災の原因はごく身近にあり、気をつけているつもりでも火災に繋がってしまうことがあります。
総務省消防庁の調査で明らかになった火災の原因は以下のとおりです。
- コンロを放置・消し忘れる
- たばこの不始末
- 放火
- 電気機器
- 配線器具
- ストーブ
- 電灯電話等の配線
意外な物も家財保険で補償できる
家財保険で補償できる物の基準は「生活に欠かせない、動かすことのできるもの」です。
たとえば以下のものが該当します。
- 電化製品
- 家具
- 衣類
- 食器
子どもがいる家庭であれば、物が壊れてしまうことも珍しくないでしょう。
「おもちゃがテレビに当たって割れてしまった」「窓ガラスにぶつかって割れてしまった」
そういった場合も、家財保険の補償対象なので申請すれば補償を受けられます。
申請の際には、故障個所の写真の提出や故障した日付を申告するなど、細かい手続きが必要です。
ノートパソコンや携帯電話、iPadは対象外にしている保険会社が多いので、加入の際は補償対象の確認を行いましょう。
火災保険は何回でも使える?
火災保険は契約期間内で対象の補償があれば何度でも補償を受けられます。
火災保険を何度利用しても保険料が高くなったり、追加で請求されたりすることはありません。
火災保険は何度でも申請し補償を受けられますが、設定した補償金額をすべて受け取った場合は契約が終了します。
また、損失が出た物の修理や改善をしっかり行うことと、申請するにあたって正当な理由がなければ補償は受けられません。
火災保険の不正請求を防ぐため、保険会社も厳しく見極めます。
万一、虚偽申告をした場合は保険金詐欺とみなされ刑事責任に問われる場合もあり、絶対に行ってはいけない行為です。
火災保険の保険料や補償額の相場
火災保険の保険料は建物の価値で決まり、これを「評価額」と言います。
評価額は保険会社が独自で決定するため、金額は保険会社によって異なります。
また、耐火性のある構造かどうかで金額が変わるので注意が必要です。
たとえば木造アパートなど耐火性のない構造の場合は保険料が上がります。
以下、保険料と補償額の相場です。
年間保険料の相場
マンションやアパート | 2~3万円 |
家財保険や地震保険もつけた場合 | 4~6万円 |
補償額の相場
借家人賠償責任保険 | 1,000~3,000万円 |
個人賠償責任 | 1,000~3,000万円 |
家財 | 100~300万円 |
賃貸で火災保険に加入するときの注意点
賃貸契約をする際には火災保険への加入が必須となりますが、契約に気を取られて重要な注意点を見落としてしまう可能性もあります。
以下では賃貸で火災保険に加入するときの注意点を解説していきます。
不動産屋に提示された保険が必ずいいとは限らない
賃貸契約する際には基本的には不動産屋を介して契約作業を進めていきますので、契約締結と同時に火災保険への加入をすすめられます。
引っ越しはやることが多いため、不動産屋さんに提示されて保険にそのまま加入することが多いですが、提案される保険が必ずしもいい保険とは限らないことをご存じでしょうか。
不動産屋が提示してくる火災保険は保障が充実されている分、保険料が割高に設定されています。
自分で加入する賃貸専門の火災保険の中には保険料が割安になるものもありますので、時間に余裕があれば比較してみるのもいいかもしれません。
地震保険はセットでしか加入できない
賃貸の火災保険でも地震保険はセットでしか加入できません。
日本は地震大国ですから、火災保険の保障対象に地震による損害を補償するとなると、保険会社がつぶれてしまいます。
そのため火災保険と地震保険は分けられています。
しかし地震保険は単体で加入することはできず、必ず火災保険とセットで加入することが求められます。
自動更新に設定すると引っ越し時に解約しないと重複契約になる
火災保険に加入する際には契約を自動更新できる契約もあります。
自動更新であれば契約解除の連絡がなければずっと保険の保障を受けられるため、継続して賃貸契約を続けていくのであれば便利なシステムです。
しかし皆さんの中には定期的に転居しなければならない職種についていたリ、給料が上がっていい部屋に住み替えたりする方もいるかもしれません。
引っ越し時に解約しないと契約が継続していきますから、転居の際に手続きを忘れてしまうと保険の二重加入状態となり、重複契約が発生してしまいます。
重複契約になると保険料を通常よりも多く支払うことになりますので、気づかないうちに損をすることもありますので注意が必要です。
賃貸住宅の火災保険って途中解約できるの?
「賃貸住宅で火災保険に加入するは良いけど、途中で引っ越すってなった時に途中解約できるかが心配…」という方もいるかもしれません。
賃貸住宅の火災保険で途中解約はできますし、違約金が発生することもありませんから安心してください。
解約時には残りの保険期間を考慮して解約返戻金を受け取れることもあります。
ただし途中解約する際には、退去するタイミングを考慮する必要があります。
退去する際には、指定した退去日には部屋で生活をしていないことがほとんど。
しかし生活していない間でも隣家には人が生活していますから、もしかしたら部屋が知らないうちに損害を負ってしまうかもしれません。
「部屋で生活していないから退去日よりも前に解約しちゃえ!」と手続きを進めてしまうと、万一解約日と退去日の間に部屋に損害が発生した場合には修理費用を自分で行うことになります。
途中解約する場合は退去日と解約日を同日にするようにしましょう。
以下の記事で賃貸での火災保険を解約する際の注意点を詳細に解説してますので、確認してみてください。
賃貸の火災保険で保険金が支払われないケースは?
火災保険で保険金が支払われないケースがいくつかあります。
火災保険は突発的に起こった損害を補償するものであるため、経年劣化による損害は補償の対象外です。
また、故意に損害を生じさせた場合や重大な過失がある場合は、法令違反により免責事由にあたり保険金は支払われません。
重大な過失は少し分かりにくいのですが、危険性を認知しながらそれを放置した場合は重大な過失と判断されます。
日常生活において、火災の原因となり得る事柄を認知し注意を払っていたにも関わらず火災に至ってしまった場合などは、保険金が支払われますので安心してください。
また、通貨や有価証券、通帳なども補償の対象外なので注意が必要です。
その他にも所持しているもので補償の対象外になるものがないか、火災保険に加入する前に必ず確認しておきましょう。
賃貸でもインターネットから自分で火災保険に加入できる?
「保険会社から提案された火災保険よりもネットで加入したほうが安いんだけど…」という方も中に入るかもしれません。
賃貸でも不動産会社から必ず加入しなければならないわけではなく、必要な保障を満たしていれば個人で加入することもできます。
自分で見積もりを取って保険料と比較しながら保険を選んでみるのもいいかもしれません。
ただしインターネットで加入するとなると、自分で契約手続きを進めたり契約管理をしなければならないため、注意が必要です。
火災保険の保険料を抑えたい場合
火災保険の保険料を抑えたい場合は、保険期間を長期で契約することをおすすめします。
火災保険の保険料の支払方法は以下のとおりです。
- 一括払い
- 年払い
- 月払い
長期の一括払いにすれば、月払いよりも割安でお得です。
特に引っ越しの予定が無ければ、2年分を一括払いにして支払いを済ませましょう。
他にも、家財の補償額を下げることで保険料を抑えられます。
補償には基本補償があるので、それ以外の部分は必要最低限の補償にすると良いでしょう。
また、マンションやアパートで階数が高い場合は、水災に遭うリスクも低くなるため、水害補償を外せます。
このように、自分の生活スタイルや家庭環境に合わせてカスタムすることで保険料を抑えられるので、保険を検討する際は補償内容もしっかり確認してください。
どの保険に加入するか迷ったら保険代理店で相談してみよう
「自分で火災保険に加入したいけどどれがいいかわからない」という方は保険代理店や保険相談窓口での相談も検討してみてください。
保険のプロが条件に応じた保障を提案してくれることもありますので、一度利用してみることをおすすめします。
保険相談窓口は店舗での利用もできますし、相談場所まで訪問してもらうこともできます。
無料で利用できますし、無理矢理に勧誘されることもありませんから意見を求めに行ってみるのもいいかもしれませんよ!
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賃貸の火災保険は必ず加入して万一の時に補償を得られるようにしよう
賃貸でも大家さんに対する損害賠償が必要になりますから、火災保険への加入が契約時に必須になります。
部屋に対する損害だけではなく自身の所有する家財にも保障が適用できますので、保障を手厚くしておいて損はないでしょう。
ただし不動産屋さんに提示される火災保険にそのまま加入してしまうと、不必要な保障がついていることもありますから、損をしてしまうこともあるかもしれません。
時間があれば必要な保障や入居条件に含まれている保障を考慮して、自分でインターネットで見積もりを取ってみるのもいいかもしれません。
ただし自分で加入する際には、契約維持管理は自分の責任で行うことになりますので注意が必要です。
もし自分で加入する先を探しているのであれば、保険代理店などの保険相談サービスを使うのもあり。
いずれにしろ賃貸契約では火災保険に加入して、自分の責任も周りからのもらい火にも対応できるようにしておきましょうね。