日本では少子高齢化が進み、高齢者の介護制度もそれに合わせて変化しています。
実は2018年の介護保険制度改正により、これまで介護保険のサービス利用が1~2割負担であったのを、一定以上の収入のある高齢者に関しては3割負担に引き上げるなど、制度の利用条件が厳しくなっているのをご存じでしょうか。
また、公的な介護保険では介護サービスの利用に限度がありますから、どうしても自己負担しなければいけない状況に陥りがちです。
そこで注目されているのが、保険会社が提供している民間の介護保険です。
しかし公的な介護保険があるため、民間の介護保険の必要性は埋もれがちです。
そこでこの記事では、民間の介護保険の保障内容を公的介護保険と比較し、必要性がある人の特徴や選び方をわかりやすく解説していきます。
目次
公的介護保険では何を補償してもらえる?
日本では現在、高齢者の介護費用を地方自治体が保障してくれる公的介護保険が利用できます。
40歳以上の男女に加入が義務付けられ、支払われた保険料をもとに運営されています。
保険料を支払っている方のうち、要支援・要介護認定など介護が必要になった方に、保障を受けられます。
65歳以上は第1号被保険者として、要支援・要介護認定の度合いに応じて給付を受けられますが、保険加入年齢である40歳~65歳未満の第2号被保険者は特定疾病に罹患した場合にのみ保障をうけられます。
第2号被保険者の特定疾病の例は以下の通りです。
- 末期がん
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靭帯骨化症
- 骨粗しょう症
- 認知症
- 脊髄小脳変性症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症
- 糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患(外傷性を除く)
上記がすべてではありませんが、これらの疾病にかかっている場合にのみ介護保険を利用できます。
主なサービス内容は以下の3つです。
- 介護サービス利用料の自己負担額軽減
- 介護サービスが高額な場合に払い戻しがある
- 住宅改修費用の一部負担
介護サービス利用料の自己負担額軽減
公的介護保険制度では、保険適用者が介護サービスを費用の自己負担額を所得に応じて、1割~3割の自己負担額で利用できます。
要支援・要介護認定される、あるいは特定疾病にかかってしまった際には、ホームヘルパーを依頼あるいは介護施設を利用する機会も多くなります。
もちろんこれらの介護サービスは無料では受けられませんので、利用料をその都度支払うことになります。
しかしサービスの利用頻度が高ければ高いほど、支出も多くなりますから公的介護保険制度では、サービスの利用料の自己負担額を軽減しているのです。
冒頭でも紹介した通り、2018年の介護保健制度改正によりこれまで1割か2割程度の自己負担だったのを、所得が現役で働いていたころと変わらないような高所得の高齢者に関しては、自己負担額を3割に設定しています。
ですが軽減された自己負担額で無制限に利用できるわけではありません。
要支援や要介護などの重症度に応じて、月々に上限が定められています。
各介護状態に乗じて上限額が定められていますので、上限額を超えた分に関しては自己負担しなければなりません
介護サービスが高額な場合に払い戻しがある
介護サービスの自己負担額を軽減できるにしろ、サービスによっては高額な利用料を請求されることもあります。
自己負担額が軽減されているからといって、頻繁に利用してはすぐに限度額に達してしまいます。
介護者が所属する世帯や収入によって変動しますが、サービス料が高額になってしまう場合には自己負担額に上限が設けられています。
上限を超えた場合には、差額分が払い戻しされます。
住宅改修費用の一部負担
要支援・介護認定を受けた場合には生活で不便が起きないように、トイレの洋式化や階段に手すりを付けるなど住宅改修を行う必要もでてきます。
もちろん住宅改修もただでは行えませんから、業者に頼むなど費用がかさみます。
公的介護保険制度では、要支援・介護認定者の居住する家を改修する際に、かかった費用を7割から9割の間で保障してもらえます。
しかしこれも上限額が決められており、介護認定者1人当たり20万円までしか支給されません。
そのため40万円住宅改修に費用が掛かった場合、9割負担してもらえる状況でも20万円までしか支給されません。
年間を通して自己負担額が高額なら払い戻しアリ
上で紹介してきたような制度を利用しても、年間を通して自己負担額が高額になってしまうこともあります。
これも介護度によって上限額が変わりますが、8月を基点に翌年の7月までかかった費用が限度額を超えている場合には、申請することで払い戻しを受けることができます。
イメージ的には「高額医療費制度」と似ています。
民間介護保険は本当に必要?
先に結論を言ってしまいますが、民間介護保険は必要です。
これまで紹介してきたように、公的な介護保険制度では介護サービス利用料など支出を抑えられます。
しかしそれぞれ上限額が決められているように、負担がなくなるわけではありません。
上限額を超えてしまった分に関しては、上限額がそれぞれ定められていますので残りは全額自己負担になってしまいます。
そのため公的介護保険でカバーできない部分は、民間の介護保険に加入しておいて、もしもの場合に備えておく必要があります。
また、民間介護保険で給付金の受け取るには、保険会社の定める保障対象条件に当てはまらなければなりません。
一般的に、民間介護保険の保障対象条件は以下の2点です。
- 保険会社の定める条件に当てはまる「寝たきり」状態か「認知症」
- 要介護認定を受けている期間が保険会社の規定期間以上
保険会社や補償内容によって、条件は変動しますので注意が必要です。
民間の介護保険を選ぶ際に注意すべき3ポイント
民間の介護保険は上でも紹介したように、公的制度では保障できない金額を給付金でまかなえます。
しかし闇雲に保険に加入するのではなく、自分のライフスタイルや経済状況にあっているかを確認しておく必要があります。
もし介護保険への加入を検討しているのであれば、以下3つのポイントを把握したうえで選ぶようにしましょう。
保険期間
民間の介護保険では、生命保険などの他の保険と同様に保険期間を、加入時に自分で決めることができます。
保険期間は以下の3つから選べます。
- 10年、20年と期間を決めた一定期間型
- 80歳までと上限年齢を決めた年齢型
- 終身で保険料を支払う終身型
一定期間型や年齢型は俗にいう定期保険を指し、保険料は比較的安い傾向にあります。
定期的に契約内容や付帯している特約を見直して、その時に合わせた補償内容に変更することができます。
終身型は保険に加入している限り、一生保険料を支払っていくことになります。
しかし定期型の保険よりも長期間の保障が得られますので、長期化しやすい介護サービス利用を安心して続けられます。
終身型は加入年齢が低ければ低いほど、保険料が安くなる傾向にありますが、保険の見直しで生じるメリットは定期保険よりも少ないのが特徴です。
保険料支払いや保障内容をその時のライフスタイルに合わせていきたいと考えている方は一定期間型や年齢型を、保険料支払いを継続しつつも保障を一生涯得たいという人は終身型を利用するようにしましょう。
保険金の受け取り方法
民間の介護保険では、保険金の給付方法を以下3種類から選べます。
- 保障適用時にまとまって受け取れる一時金タイプ
- 定期的に決まった金額を分けて受け取れる年金タイプ
- 一時金と年金の併用タイプ
一時金タイプは、保険会社の定める保障要件に当てはまった場合にまとめて給付金を受け取ることができます。
しかし上手にやりくりしていかないと必要な時に利用できないことも。
年金タイプならば定期的に受け取れるので、安定して利用できますし給付金の管理も容易です。
ですが長期的に継続して給付を受ける可能性も考慮して、保険料が比較的高く設定されていますので注意しましょう。
一時金と年金両方受け取ることもできますが、その分保険料も高くなりますので、家庭の経済状況等を考慮してからどのタイプの給付を受けるかを決定するようにしましょう。
公的保険と連動させるか保険として加入するか
民間の介護保険は、公的介護保険の受給要件である介護認定を活用して給付を受けるパターンと、保険会社が定める条件に沿って給付を受けるかの2パターンが選べます。
公的介護保険の受給要件である介護認定を活用すれば、受給条件が明確になりやすいメリットがあります。
そのためどのケースで受給申請できるかを判断しやすくなります。
しかし要介護認定を受けるとなると、地方自治体に申請してからカウンセリングや審査会に掛けられるなど、認定が下りるまでかなり時間がかかります。
また認定が必ずおりる保障もないので、もし保険を利用したい場合でも条件外とみなされて全額自己負担になってしまう可能性もあります。
民間介護保険の基準を活用すれば、設けられている基準をもとに決定されますので、条件さえ満たせばすぐに保障を受けられます。
保障条件を明確にするか、保険をスムーズに利用するかも考慮して選択するようにしましょう。
民間の介護保険が必要な人
- 公的介護保険の保障だけでは不安な人
- 将来要介護になっても家族に迷惑をかけたくない人
- 介護の給付を上限なく利用したい人
- 他の保険と並行してもしもの場合に備えたい人
これまで紹介してきたように、公的介護保険では保障できる範囲に限界があります。
そのため保障範囲を超える金額に関しては、全額負担になってしまいますので将来介護を受けた時に、公的保障を超えた分に対応したい!と考えている人におすすめです。
保険料をコツコツ納めていれば、もしもの時に活用できますので、貯蓄が十分でない人も安心です。
また同様に自己負担額が増えてしまうことにより、介護してくれる家族に金銭的に迷惑をかけてしまう人も加入しておいたほうが良いでしょう。
医療保険や生命保険と同様に加入しておき、様々なリスクに対応したい!と考えている方も是非利用してみてくださいね。
民間の介護保険に加入する必要がない人
民間介護保険が必要な人もいますが、反面加入する必要がない人もいます。
- 貯蓄が十分にあり自己負担額が増えても対応できる人
- 公的保障だけで済ませたい人
老後でも収入のめどが立っている場合や貯蓄が十分にある人は、介護サービスを利用して自己負担額が増えても対応できるため、わざわざ加入する必要はありません。
また余談になりますが、民間の介護保険は、公的介護保険料とは別に保険会社に支払わなければなりません。
保険料負担が増えてしまうため、保険料を定期的に支払うのが難しい人には加入は難しいでしょう。
必要な保障を把握して民間保険への加入を検討しよう
いかがでしたか?
40代以上から保険料支払いが義務付けられている公的介護保険は、介護サービスの負担額を減らせる非常に有益な制度ですが、限度額が設けられているため中には結果的に自己負担額が大きくなってしまう人もいます。
もしもの場合に備えて民間の介護保険に加入しておけば、自己負担額が増えても条件さえ満たせば給付金を受け取ることができますので、必要性は高いといえるでしょう。
給付金の支払い方法や保険期間は自分で設定できるので、経済状況やこれからのリスクを考慮して決定するようにしましょう。