最近では子供ができない体質を改善するために、不妊治療を行う家庭も増えています。
しかし不妊治療は体外受精など特別な医療行為を活用して行うことが多く、健康保険制度の窓口負担軽減の対象外になっています。
一回で10万円以上する治療もあるため、毎回同じように支払うのは家計的にも大きなダメージとなります。
そこで利用したいのが、毎年2~3月に実施されている確定申告時に、同時に申請できる医療費控除です。
実は不妊治療でかかった費用も、医療費控除の対象になることをご存じでしょうか。
今回は不妊治療を行っている家庭向けに、不妊治療の費用を医療費控除で申請するときの方法について、徹底的に解説していきます。
目次
医療費控除は確定申告時に医療費が控除される制度のこと
医療費控除とは確定申告時に医療費の金額に応じて、所得税と住民税が控除される制度のことを指します。
1月1日から12月31日の間に実際に支払った医療費が対象になります。
ただし医療費が満額控除されるわけではなく、家庭の所得に応じた税率を医療費にかけた金額が税金から差し引かれることになります。
その他には、下記の特徴があります。
毎年2~3月の確定申告時に申請できる
医療費控除は毎年2~3月に実施される確定申告書と同じタイミングで申請が可能です。
自営業者やフリーランスとして働いている方は、確定申告と同じタイミングで実施できるので、手間取ることが無いメリットがあります。
一方で企業に勤めている方は、勤め先で年末調整をしているため、確定申告をする必要がありません。
その場合は後述しますが、必要な書類だけをもって近くの税務署に行き、手続きをしましょう。
確定申告が必要ない場合には、支払った年から5年以内であれば申請が受理されます。
同一生計を立てている配偶者や親族もまとめて申請できる
医療費控除は自分の支払った医療費だけではなく、同一生計を立てている配偶者や親族もまとめて申請できるというメリットがあります。
そのため同じ年に立て続けに家庭内で病院に通院する機会が多い場合には、合算して医療費控除を申請できるのです。
医療費控除には10万円以上の金額から申請できるという制限がありますから、合算したほうが申請できるハードルが下がるのです。
最高で200万円まで申請できる
医療費控除は10万円以上をこえる金額から控除を申請できますが、無限に申請できるというわけではありません。
医療費控除で申請できるのは最大で200万円までと上限が決められているので、控除されるからと何回も病院に通うのはNGです。
不妊治療も医療費控除の対象になる
冒頭でも紹介した通り、不妊治療も医療費控除の対象になります。
条件は以下の通りです。
人工授精・体外受精・卵子凍結費用が対象
不妊治療に関わる人工授精・体外受精・卵子凍結費用も、医療費控除の対象になります。
各治療にかかる費用は、一般的には以下の金額とされていますから、控除できることで翌年の税負担を軽減できるメリットがあります。
人工授精 | 3万円 |
---|---|
体外受精 | 50万円 |
卵子凍結費用 | 25~50万円(維持費別途) |
上記の治療は1回ごとにかかる費用ですし、公的な健康保険制度の保障対象外になります。
もちろん上述した通り、自己負担額がありますから無限にできるわけではありませんので、注意が必要です。
治療に係る医薬品
不妊治療のために病院から処方された治療にかかる医薬品類の費用も、医療費控除で申請できます。
また医師から処方を受けていなくても、医薬品として公的に登録されている場合は、対象になりますので忘れずに申請しましょう。
妊娠のために通院したマッサージや鍼灸治療も対象になる
指圧や鍼灸治療を行い、妊娠しやすい体質に改善しようとする治療もあります。
きちんとした資格を持っている人からの治療であれば、マッサージや鍼治療であっても医療費として認められます。
ただしアロマセラピーや資格者でない人から受けた施術は、医療費控除で申請できなくなってしまいますので、注意が必要です。
助成金や給付金を差し引いた金額のみ申請できる
冒頭で、不妊治療は医療費控除の対処外であることをお伝えしましたが、実は公的機関による助成金制度もあるのです。
もちろん医療費控除で申請するときには、助成金や給付金を差し引いた金額のみが申請可能です。
一般的に実施されている不妊治療の助成金制度は、下記の2つです。
国の不妊治療特定治療支援事業
厚生労働省より実施されている不妊治療特定治療支援事業は、妻の年齢が43歳未満の夫婦が受けられる制度です。
給付は1回につき30万円が支給されます。
不妊治療の助成を受け始めた時の妻の年齢が40歳以下の場合は通算6回まで、助成を受けられます。
また40歳以上43歳未満である場合には、通算3回までの制限になります。
1子ごとに支払われるのに加えて、所得制限が設けられていないので、どの世帯でも利用できるメリットがあります。
また女性の不妊治療だけではなく、男性の不妊治療を実施した場合も30万円の支給を受けられます。
地方自治体独自の不妊治療給付金
地方自治体でも独自で不妊治療給付金を実施しているところもあります。
自治体によって金額や条件が異なりますので、注意が必要です。
医療費控除の申請方法
医療費控除の申請方法は、以下の通りです。
- 1年間でかかった医療費の明細表を作成する
- 確定申告書を作成する
- 税務署に行って手続きをする
特に医療費を申請するときには、きちんと領収証が必要になります。
また確定申告と並行して行わない場合でも、源泉徴収票が必要になりますので、用意しておくことをおすすめします。
不妊治療の費用を医療控除で申請するときの注意点
不妊治療の費用を医療事項所で申請するときには、下記の注意点も把握しておきましょう。
- 家族の治療費と一緒に申請するのを忘れないようにする
- 他の税額控除で差し引かれていると実感がわきにくい
- セミナー等の受講料も控除の対象外になる
以下で詳しく解説していきます。
家族の治療費と一緒に申請するのを忘れないようにする
不妊治療の費用を申請するのに没頭しすぎて、家族の治療費と一緒に申請するのを忘れてしまう家庭は意外と多いです。
勿論限度額を超える分は申請しなくても構いませんが、家族の治療費の領収証も一緒に取っておくことをおすすめします。
申請の手続き自体は簡単なものではありませんから、一回で済ませられるようにしておきましょう。
他の税額控除で差し引かれていると実感がわきにくい
医療費控除で控除されるのは、住民税と所得税です。
実は住民税と所得税は他の制度でも控除対象になることをご存じでしょうか。
生命保険料控除やふるさと納税などでも同様に、住民税と所得税が控除されるため、他控除で控除されていることが意識の中に亡くなってしまうこともあります。
他の税額控除で差し引かれていると、実感がわきにくいデメリットもありますので、注意が必要です。
セミナー等の受講料も控除の対象外になる
妊活セミナーなど、いろんな肩書を持った人のセミナーに通っている方も居いるかもしれません。
しかしセミナー等の受講料も控除の対象買いになります。
身体に直接行っている治療行為ではないことはもちろんのこと、有資格者ではありませんから、費用を医療費として請求することはできないのです。
不妊治療を医療費控除で申請して税控除をうけよう
いかがでしたか?
不妊治療はパートナーと協力して地道な努力が必要になる治療です。
しかし毎回数十万円がかかることもあり、家計を苦しめる要因にもなりかねません。
医療費控除を活用すれば、翌年の適用にはなりますが、世帯収入の税率×医療費が住民税や所得税から差し引かれることになります。
少しでも医療費控除を活用して、家計の負担を減らしていきましょう。