最近は結婚に対しても、さまざまな価値観が尊重され「事実婚」を選択する人も増えました。
しかし事実婚では「配偶者」にはならないため、法定相続人にはなれません。
このように婚姻関係にないと不便さを感じることもあるのが「内縁の妻」です。
しかしパートナーの健康保険に扶養に入れることは知っていますか?
そこで今回は事実婚で扶養に入る条件などを解説します。
健康保険は大きく分けて3種類!違いと見分けるポイントを解説します
目次
健康保険では条件を満たせば内縁の妻でも扶養に入れる
相続や配偶者控除などは、婚姻関係にないと税法上の控除を受けることが出来ません。
しかし健康保険は事実婚でも扶養に入ることができます。
それは健康保険があくまでも内縁の妻としての実態を重視しているからです。
似たようなもので厚生年金保険では、事実婚同様の事情のある人を含むように決められています。
このように税法以外の健康保険や厚生年金保険では、事実婚であっても扶養に入ることを認めているのです。
事実婚で健康保険の扶養に入るための条件
事実婚で健康保険の扶養に加入できますが、ただ事実婚状態であれば、どのような人でも加入できるというわけではありません。
扶養に加入するためには、決められた条件を満たしている必要があります。
下記に記す条件を満たしている人のみ、事実婚であっても扶養に入ることができます。
ちなみに同棲と事実婚は違うものです。
結婚に準じた法律関係にあるのが事実婚ということをきちんと理解しておく必要があります。
それを踏まえて扶養に入るための条件を見ていきましょう。
同居している事実がある
まず前提として同居している事実があることが必要です。
そもそも被扶養者の範囲は決まっています。その範囲とは、
- 被保険者と同居していなくても扶養には入れる人:配偶者、子、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属。法律上家族関係にある人
- 被保険者と同居していないと扶養に入れない人:上記以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)、内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
と決められています。
事実婚は②に該当するため、同居していないと扶養に入ることが出来ないのです。
年収が130万円未満
次に扶養に加入するためには、年収が130万円未満であることも条件です。
年間収入130万円未満(60歳以上又は障害の場合は、年間収入180万円未満)で
- 同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
- 別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
また同一世帯の条件も用意されています。
配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族は同一世帯でなければならないと定められているので、注意が必要です。
事実婚で健康保険の扶養にはいるための手続き方法
事実婚で扶養に入るためには、条件をクリアすることが絶対条件ということはわかりました。
それを前提として、具体的に扶養に入る手続き方法を紹介します。
手続きと言っても、本人や扶養に入りたい人が手続きをするのではなく、会社と加入している健康保険組合との間で手続きが行われるので、必要な書類を提出することになります。
事実婚のパートナーの扶養に入るためには、内縁関係を証明する書類への記入が必要となるなど通常の扶養の加入手続きとは若干異なる手続きがあります。
少しでも手続きをスムーズに進めるためにも、確認しておきましょう。
内縁関係を証明する書類に記入する
まず扶養に入るための書類を揃える必要があります。
必要な書類は「扶養に入る人の収入証明」と「続柄が記載されている住民票」「本人と扶養に入る人それぞれの戸籍謄本の原本」です。
住民票の続柄は、何もしないとそれぞれが同居人となってしまい扶養に入るための事実婚を証明する書類とはなりません。
そのため住民票の続柄を「夫(世帯主)」「妻(未届)」と変更しておく必要があります。
具体的には市役所などにある「世帯変更届」に記入しましょう。
窓口で提出して承認を得る
世帯変更届に「妻(未届)」と記載したら、市役所の窓口に提出します。
記入漏れやミスがなければ承認が得られ、事実婚の手続きが完了します。
事実婚を公的なものにするには、上記の手続きが必要となるということをしっかりと覚えておきましょう。
基本的にこの書類で手続きを進めることができますが、会社によってはさらに別の書類の提出が必要となることもあるでしょう。
その場合は必要書類を速やかに揃え提出するようにしましょう。
注意!扶養に入れてもその他の制度では対象外に
法律的には婚姻関係にない事実婚であっても、健康保険の扶養に入れるということはわかりました。
しかしこれは健康保険に限った話であって、法律的に事実婚では認められていないこともあります。
最初にもお話した通り、配偶者控除や法定相続人がその代表です。
さらにパートナーに医療的な処置が必要となった場合も、事実婚では同意することが出来ません。
日本ではまだまだ事実婚の制度が進んでいないということを理解し、結婚のスタイルを決める必要があります。
配偶者控除は受けられない
配偶者控除は、法律的に認められた配偶者でないと受けることが出来ません。
これは所得税法によって、扶養している妻もしくは夫がいると控除を受けられることになっていますが、民法による規定で事実婚のパートナーは配偶者として認められていません。
ですので配偶者控除を受けることが出来ないのです。
法定相続人になれない
法律によって認められた婚姻関係にある配偶者が死亡すると、その妻あるいは夫は法定相続人として認められているので、相続することができます。
しかし事実婚のパートナーが死亡しても法定相続人として認められていないため、遺産を相続することが出来ません。
どんなに長く一緒に生活していても、1円ももらえず兄弟等の法定相続人に渡ってしまうという現実があるということも、理解しておく必要があります。
パートナーの医療への同意ができない
意外な注意点として、パートナーが医療的に同意がいる処置が必要となっても事実婚では同意することが出来ないということがあります。病気やケガにより急な手術が必要となった場合でも、事実婚の内縁の妻では同意書にサインをすることを認めていていない病院も多くあります。
そのため危機的な状況であってもパートナーの親族にサインをしてもらう必要があるのです。
さらに病院によっては、死亡した場合の遺体の引き取りをさせてもらえないということもあるようです。
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健康保険の加入条件を把握して事実婚でも保障を獲得しよう
今回は事実婚でも健康保険の扶養に入ることができることをお話しました。
加入するためには条件をクリアする必要はありますが、結婚に対する価値観が変わりつつある現代にフィットした制度です。
事実婚カップルがパートナーの健康保険の扶養に加入しようと思ったら、まず条件に当てはまるかを確認してから手続きを進めることが大切です。事実婚でも胸を張って保障を獲得しましょう。