生命保険のうち終身保険は、保険を掛けられている人がいつ亡くなったとしても保険金が受け取れます。
ですが、加入する際にはその保険金を受け取る「受取人」を決めなくてはなりません。
支払われる保険金は膨大な金額になることもありますから、慎重に考えて設定することが重要になります。
受取人に設定できる人は限られていますし、受取人によって税金の金額も変わります。
そこで今回は、保険金にかかる税金の種類やケースごとに指定すべき受取人について紹介していきます。
目次
終身保険の受取人には誰が指定できるの?
そもそも終身保険の受取人を指定する際に気になるのが、自分と関係のある人間のうちどこまで受取人になれるのかについてだと思います。
もちろん保険金ですから、誰でも保険金の受取人に指定することは出来ません。
以下で解説していきます。
配偶者か2親等以内の親族でないとNG
これは大原則なのですが、配偶者か2親等以内の親族でないと保険金の受取人として指定することができません。
2親等と聞いてもイメージしづらいですよね。
1親等はあなたから見た両親や子ども、2親等とはあなたから見た祖父母、孫にあたります。
これらの人は保険金の受取人として指定することができます。
逆に叔父(伯父)や叔母(伯母)やいとこ、甥や姪に受け取ってもらおうとしても、受取人に指定することは出来ません。
親族以外でも受取人にできることも
全ての保険会社に共通するわけではないのですが、上に挙げたような2親等以内でなくとも、保険会社の定める条件をクリアすれば受取人にできる人がいるんです。
籍を入れていないいわゆる内縁の相手、あるいは婚約者です。
保険会社によって条件はまちまちですが、双方独身である、結婚の予定がある状態、一定期間以上同居して生計を共にしているなど、制約が設けられています。
保険によって変動がありますが、同性のパートナーでも受取人に指定できるようになってきました。
加入者本人は受取人になれないので注意!
終身保険に加入している本人はもちろん受取人に指定することは出来ません。
加入者が保険金受取人を指定できる権限を持っていますが、死亡した人に対して保険金を支払っても意味がないですよね。
もしも相続させたい人がいるのであれば、受取人を指定するようにしましょう。
受取人は複数人、受取割合も設定できる
保険金の受取人は1人だけしか設定できないというわけではありません。
受取人を配偶者と子供というように複数人指定できるのです。
もちろんそれぞれに全額渡すのではなく、保険金を分ける必要がありますので、受取割合も設定します。
ただし、受取人によっては税金の種類が変わりますので、受取金額が減る可能性がありますので注意が必要です。
保険金にかかる税金は受取人によって変わる
保険金を受け取る際は、無料でそのままもらえるのではなく税金が必ずかかります。
保険金の受け取りの際にかかる税金は以下の3つのいずれかです。
- 贈与税
- 相続税
- 所得税
どの税金が適用されるかは受取人と契約者、被保険者の関係性で変わります。
以下で確認していきましょう。
贈与税の対象になる受取人
贈与税の対象になるのは、保険の契約者と被保険者、受取人がすべて違うときです。
例えば3人家族の場合、終身保険の契約者が父親、保険を適用されている被保険者は母親、その保険金を受け取る受取人を夫婦の子供と指定した時に贈与税が適用されます。
そのため、契約者と被保険者と受取人がすべて違う場合は、2親等以内の誰であっても受取人に贈与税が適用されます。
基礎控除が設けられており、保険金額が110万円以上の場合にのみ10~55%の税率が金額に応じてかけられることになっています。
相続税の対象になる受取人
相続税の対象になる場合は、契約者と被保険者が同一のときです。
例えば、父親が自分で保険を契約して被保険者になった場合、受取人に対して相続税がかけられます。
相続人は法定相続人である必要があるため、相続税が適用される際の受取人には、法定相続順位の高い子供や配偶者が主に選ばれることが多いです。
所得税や住民税の対象になる受取人
所得税や住民税の対象になる場合は、保険の契約者と受取人が同じときです。
例えば、夫婦間で片方が亡くなった場合に生活費を残すために、夫が妻にかける終身保険を契約して妻が亡くなった際に保険金を自分で受けとるケースがあります。
そのため所得税や住民税の対象となるのは、夫婦間で保険金の受取人を指定するケースが一般的であると言えます。
ケースごとに指定すべき受取人を紹介!
税金関係なく、目的や現在の状況に合わせて受取人を決めていきたい人もいますよね。
そこで以下では自分に保険を掛ける際にケースごとに指定すべき受取人を紹介していきます。
生活を保障してあげたいならそれに合わせて受取人を指定
自分や被保険者が亡くなることで生活が苦しくなることが予想される親族がいる場合は、その人を指定するようにしましょう。
結婚しているのであれば配偶者や子供、独身であれば両親がベストです。
上でも紹介した通り内縁でも婚約者でも指定可能ですが、受取人に指定する際は保険会社の定める条件をクリアしている状態にしておく必要があります。
戸籍謄本や住民票、収入照明など二人が同居している関係であることを証明する書類を用意しておきましょう。
孫に贈与するなら生前贈与が◎
孫に贈与したい!というおじい様おばあ様もいるでしょう。
孫に贈与することは2親等以内なので可能ですが、法定相続人ではないため受取金額が減ってしまうことも考えられますので、生前贈与を活用するようにしましょう。
生前贈与する際にも贈与税が適用されますので、年間110万円以下の生前贈与であれば課税されませんので、孫の受取金額を減らすことなく渡すことができます。
しかし複数回にわたって110万円以下の生前贈与を行ってしまうと、後々調査した際に贈与を分割して税の支払いを避けていたとして、受取金額分の贈与税をまとめて納付する必要が出てきますので注意が必要です。
数年にわたって贈与するのであれば、110万円を超えた金額を渡して少しずつ贈与税を納付することをおすすめします。
トラブル回避したいなら配偶者か子供を受取人に
いざ自分が亡くなってしまった際に、配偶者や子供がいるにもかかわらず両親や兄弟を保険金の受取人に指定してしまうとトラブルのもとになりかねません。
受取人を確認して、できるだけ配偶者や子供に切り替えるようにしましょう。
自分の死後に親族間でトラブルが起きる原因にもなります。
例えば、結婚前に加入している際は、その時一番近しい2親等以内の親族を指定しますので、親や兄弟でも受取人になれます。
しかし結婚して配偶者や子供ができたのにもかかわらず、受取人を親や兄弟のままにしておくと自分が死亡した際に配偶者や子供に1円も残らないなんてことにもなるんです。
死後に配偶者と受取人の間で裁判になる…なんてこともありますので気を付けましょう。
また、内縁関係の相手や婚約者でも条件を満たせば受取人に指定することができますが、親族間に伝えておかないとこちらもトラブルになる可能性が高いですので注意しましょう。
もし保険金を受取人が本来受け取らせたかった人に渡した場合は、贈与税が発生して結果的に受取金額が大幅に少なくなってしまうことにおつながります。
離婚した後の受取人は親か子どもが◎
何らかの事情があって配偶者と離婚する際は、受取人を確認して親か子どもに受取人を変更することをおすすめします。
もしも離婚後も配偶者を終身保険の受取人として指定していた場合、死亡後に親や子供に一円も残せずに関係のなくなった相手に多額の保険金を受け取らせることになってしまいます。
こちらも親族とのトラブルに発展する可能性がありますので、気を付けましょう。
解約変戻金があるなら保険解約する必要がある
解約返戻金がある終身保険の場合は、離婚時には解約しなければなりません。
離婚時にはそれぞれが共有していた財産を分ける財産分与を行います。
実は終身保険の解約返戻金も財産分与の対象になるんです。
解約返戻金のある保険に加入している場合は、受取人の変更ができないことを覚えておきましょうね!
再婚時も戻す必要がある
もし別れた配偶者や新しい相手と再婚する場合、受取人を親に変更していた場合は、配偶者に戻す必要があります。
結婚した時の対応と同じですが、再婚期間中に自分が亡くなってしまった場合、受取人を親のままにしていると、一番生活を守らなくてはいけない家族に保険金を残せないおそれがあるからです。
再婚時にも受取人を変更していないかを確認しておきましょう。
親が婚姻関係を解消しても相続権は子供にもある
もしも離婚や再婚をしたとしても、別れた配偶者との間の子どもにも遺産等の相続権が存在します。
いくら籍が変わったとしても、子供であることには変わりないからです。
もちろん終身保険でもらえる保険金も相続できる対象になりますから、前の配偶者との間に子供がいる場合は、受取人を決める際にトラブルが起きないように配慮しておく必要があります。
受取人を決める時は1人だけではなく複数人、そして受取割合を設定することもできますので、それぞれに配慮して分割する必要があります。
シングルなら子を受取人にして未成年後見人を立てる
配偶者と離婚して再婚しないまま、シングルとして生活していく方は、子供を保険金の受取人に指定するようにしましょう。
子供の将来のための費用を残すことができます。
しかし子供が未成年の場合は、信頼できる大人や弁護士に依頼して未成年後見人を立てるようにしましょう。
保険金は膨大な金額になることがほとんどですので、子供が成人するまでは大人に管理させて安全で適切な運用をしてもらえます。
受取人が死亡したら保険金はどうなる?
元々決めていた受取人が死亡してしまうことも中にはあります。
受取人が死亡してしまった場合は、受取人の財産を相続できる人物に権利が移ってしまいます。
全く関係ない人に保険金が行くこともありえますから、受取人死亡時にはすぐに受取人を変更するようにしましょう。
変更後の受取人は、2親等以内であれば自分で自由に設定できます。
受取人変更をする際の手続き方法
ではここまで紹介してきた受取人変更の手続き方法について、解説していきます。
手続きは簡単で、保険会社側に連絡すればOKです。
具体的には以下の手順を踏むことになりますので、一応確認しておきましょう。
- 保険会社へ保険金受取人の変更について相談する
- 保険会社から変更手続きの書類が自宅に郵送されてくる
- 書類を記入後必要書類を取り寄せて返送
- 手続き完了
悩んだらすぐにFPに相談しよう
もしも家庭の事情が複雑であったり、自分一人で解決できないような問題が生じた場合は、速やかにFP(ファイナンシャルプランナー)に相談するようにしましょう。
FPはお金やライフプランを立てていくプロですから、的確なアドバイスをもらうことができます。
また保険に加入する前でしたら、保険代理店で相談してみるのもひとつの手です。
自分の独断で決めてしまうと、後々トラブルになる…なんてことにもなりかねませんので、専門知識のある人に判断を仰いでみましょう。
受取人選びに気を付けて適切に保険金を残そう!
いかがでしたか?
終身保険の保険金は受取人によって税金が変動しますので、契約の際や受取人決定の際にどの税金が適用されるのかを確認しておく必要があります。
またケースに応じて、保険金の受取人を設定しなければ自分が想定していない人物に保険金が渡ってしまう可能性があります。
2親等以内であれば指定できますので、よく考えて選ぶようにしましょう。
もちろん保険会社の定める一定以上の条件を満たしていれば、内縁関係の相手でも婚約者でも保険金を受け取らせることもできます。
ですが周囲に伝えたり分割内容を適切な内容にしていないと、死後トラブルが勃発する可能性もありますので注意しましょう。
もしも不安があるのでしたら、保険を契約する際にFPに相談したり、保険代理店で相談してみるのも手です。
適切な受取人を選んで、終身保険の保険金を有効活用してもらいましょうね!