70代や80代の方は子どもも独立し、現役の環境から離れ、ゆっくりとした老後生活を送っているはず。
同時に、老後資金や病気やケガなどのリスク、終活なども視野に入り、生命保険の見直しや加入の必要性も気になる頃ではないでしょうか。
しかし、「生命保険の選び方がわからない」「公的医療制度はどうすれば利用できるの?」などの疑問を抱えている方も多いですよね。
今回はこのような気になる疑問を徹底解説します。
本記事を読めば、70代の方が保険の加入・見直しする前の必要な知識や、注意点がわかるため、保険選びの参考になるはず。
目次
70歳以上が生命保険に加入する必要性
公的医療制度による自己負担額の減少や、子どもの独立による死亡保険金の重要性の少なさから、70歳以上は生命保険に加入する必要性が高くないと思われがちです。
しかし、今後のケガや病気などのリスクを考慮すると、生命保険の加入はとても重要。
例えば、直近5年間の入院経験の割合は、60代の場合、約30%以上が15日以上、10%以上が1か月以上です。
そのうえ、1日あたりの平均の入院費用は約1万円かかり、治療費も加算され、合計の医療費が高くなる傾向にあります。
また、葬儀代の平均費用は約208万円と、非常に高額(第4回お葬式に関する全国調査(2020年)。高齢者になればなるほど、ケガや病気になるリスクは高まり、万が一の事態に備える必要があります。
なので、基礎的な範囲のみカバーする生命保険だけでも、加入の検討をするのがおすすめです。
高齢者は保険加入が必要か不要か?高齢からでも活用できる保険について
70歳以上に生命保険は必要?・不要?
70歳以上の方は、生命保険が必要な場合と、不要な場合があります。個人のライフスタイルや資産状況に依存するためです。
必要な人
生命保険が必要な70歳以上の方は、老後の収入や自分の資産で、下記の項目を十分にカバーできない方です。
- 葬儀代
- がんになった際の治療費・通院費
- ベッド代や入院中の生活費、数十万円~数百万円かかる先進医療費
上記のポイントはあくまで一例ですが、これらの費用をカバーできない方は、生命保険に加入するのがおすすめ。
保険金で自分の資産や収入を守り、家族に負担をかけさせないためです。
不要な人
老後も株式投資や不動産関係の定期的な収入、何百万~何千万といった貯蓄した資産が十分にある70際以上の方は、生命保険に加入する必要性が低い傾向にあります。
月々の保険料を払わなくとも、万が一の事態にも対応できる資金力があるためです。
ただし、資産や貯金が高額な場合、終身型の死亡保険の加入がおすすめ。
加入者が死亡した際、遺族が受け取れる財産にかかる相続税を、少しでも減額できるためです。
持病がある70歳以上でも加入できる生命保険
「生命保険には加入したいけど、持病があって審査が通らない」といった70代・80代の方は多いですよね。
今回は、持病がる70歳以上の方でも、加入できる生命保険を2種類紹介するので、ぜひご参考にしてください。
引受基準緩和型保険(限定告知型)
引受基準緩和型保険(限定告知型保険)とは、通常の生命保険よりも、保険に加入する際の診査基準が低い保険の総称です。
例えば、通常の保険会社は加入時に、過去5年間の手術・入院歴を聞くのに対し、引受基準緩和型保険は、過去2年間の条件に限定されるため、加入のハードルが低いのです。
また、持病が悪化した場合でも、保障を受け取れるケースがあるため、高齢者に向いた生命保険といえます。
しかし、一般の保険よりも割高な保険料や、加入後の一定期間は、保険金が半額支給などのデメリットもあります。
持病がある方は、生命保険の必要性と、引受基準緩和型保険のデメリットの両方を吟味しながら、保険選びをしてください。
無選択型保険(無告知型)
無選択型保険とは、年齢や手術・入院歴、医師の診査がなくとも、加入できる生命保険です。
引受基準緩和型保険よりも加入のしやすさがメリットですが、注意点がいくつか存在します。例えば、
- 加入時の持病が悪化した場合、保障されないケースがとても高い傾向
- 保険料は引受基準緩和型保険よりも割高
- 保障の手厚さは、一般の保険や引受基準緩和型保険よりも低い傾向
引受基準緩和型保険よりも加入しやすい分、保障の手薄さや保険料の割高などが大きなデメリット。
「持病や手術歴などの経験があるが、どうしても生命保険に加入したい!」といった方に向いている生命保険です。
【保険加入前に知っておきたい】70歳以上の公的医療制度について
生命保険に加入する前に、70歳以上の方は公的医療制度の仕組みと特徴を理解しましょう。
公的医療制度とは、医療保険や年金などを含む社会保険の1つで、ケガや病気で入院した際に保障の受け取れる保険制度です。
公的医療制度には、高額療養費制度と高額介護合算療養費の2種類が存在するので、詳しく解説します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヵ月分の治療費の世帯合計が一定額を上回った際、自己負担額(年齢と所得状況で算出される金額)を超過した金額が、払い戻される制度です。
特に70歳以上の場合は、自己負担額が1年ごとに変更されるので、定期的なチェックが必要です。
例えば、平成30年の8月診療分では、一般所得者(月収28万円未満)の場合、個人外来の自己負担額は年間14.4万円で、世帯の入院・外来は57,600円です。一般所得者の自己負担額が基準となり、上に現役並み所得者、下に低所得者と分けられており、具体的な自己負担額が決められます。
(現役並み所得者とは、株式投資といった一定額の収入がある個人のこと。月収28万円から開始し、収入幅に応じて、3つのレベル分けがされています。)
世帯主の家族は全員、普段から病院の領収書を管理し、高額療養制度を使えるように準備しましょう。
高額療養費制度が使えないつの条件!治療を受ける前に確認しよう
高額介護合算療養費
高額介護合算療養費とは、医療保険と介護保険の自己負担額の世帯合計が、一定額を上回った際、自己負担額を超過した分が払い戻される制度です。
自己負担額が算出される期間は、8月から翌年の7月までの1年間です。
高額療養費制度とは異なり、1年間の合計自己負担額に対して、限度額が設けられてるのが特徴。
例えば、月収26万円以下の70歳以上の方は、56万円が自己限度額なので、1年間の間にこの金額よりも多く支払った分のみ、払い戻しされる仕組みです。
医療保険と介護保険は、70歳以上が積極的に利用する生命保険の1つなので、ぜひ利用したい制度ですね。
70歳からの保険選びのポイント
70歳からの保険選びでは、3つの大きなポイントがあります。
- 加入済みの生命保険の把握
- 死亡保険、がん保険、医療保険に加入する際の考え方
加入済みの生命保険の把握
まずは、加入済みの生命保険を把握しましょう。必要な保障範囲と金額、保険料を節約するためです。
例えば、以下のような項目を基準に見直しするのがおすすめ。
- 保障期間は短すぎず、長すぎないか
- 死亡保険や医療保険の保険金や給付金は適切か
- 現状の保険金額は適切か
- 保険金の受取人と受け取り方法
- 満期保険金、解約返戻金、お祝い金の有無
- 保険金や給付金の額はいくらか
上記のような項目を定期的にチェックし、保障の幅を広げるor狭くする・新しい保険に加入するなどの対応をしましょう。
また、ベッド代や入院期間の生活費用など、保険金ではカバーしきれない項目をおぎなえる程の資金力がも同時にチェックするのがおすすめ。
死亡保険の選び方
70歳以上の方は子どもも独立し、30代や40代の頃のような高額の保険金は不要になります。
なので、死亡保険の必要性を感じずに、解約する人も少なくありません。
しかし、70歳以上でも、死亡保険は必要です。なぜなら、自分が亡くなったときに備えなければならないから。
例えば終活する際、家族の負担も考えて、相続関連や葬式・日長な費用など、生前に把握したい方も多いですよね。
低保障の死亡保険でも、加入しておけば必要な葬儀代が捻出できるうえ、残された家族の精神的・金銭的な負担を和らげる効果もあります。
特に、夫婦2人世帯の方は、パートナーの人生も考えて、死亡保険の加入を積極的に検討しましょう。
がん保険・医療保険の選び方
医療保険やがん保険を選ぶ際は、公的医療制度の保障範囲外をカバーするような保険選びをしましょう。
また、保証範囲外の分野をカバーできるほどの資金力があるかどうかをチェックするのも大切。無駄の少ない保険料と十分な保障の両立を実現し、万が一の事態に使える資金を把握するためです。
医療保険やがん保険によっては、入院費の高額保障やがんと診断された場合の一時金が高額なプランも存在。
しかし、多くの保険は、入院時のベッド代や生活費、先進医療費用などは、保障の範囲外です。
十分な範囲の保障を受けられ、緊急事態に使えるお金がいくらあるかを、チェックするのが大切です。
70代の平均加入率と保険料・保険金の相場
70代の保険事情を、3つの観点から紹介します。
- 平均加入率
- 保険料の相場
- 保険金の相場
平均加入率
70代(世帯主)の生命保険の加入率は、85.4%と非常に高水準な傾向にあります(生命保険文化センター 生命保険(個人年金保険を含む)の加入状況)。
より身近なリスクとなったがんや入院などに備えるために、医療保険やがん保険の加入が多い印象。
また、保険料や保障の観点から、若いときに加入した生命保険を、保険金や保証範囲を調整しながら使っているケースもあります。
保険料の相場
70代の保険料の相場は、年額12万円未満と、12~24万円未満が多い傾向にあります(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」より)。
しかし、84万円以上支払っている世帯が約4%もいるので、70代の保険料の幅はとても広い印象がありますね。
しかし、保険料はあくまで目安なので、適した保証範囲と保険料の安さの両立ができるような保険選びをしてください。
保険金の相場
生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、70代の保険金は明記しておりません。
なので、60代の保険金を参考にしてください。60代男性は、1,192万円、60代女性が655 万円です。
社会的・経済的責任の観点から、70代は60代よりも保険金が少なります。
生命保険は70歳からでも遅くない!保険を使って安心な老後生活を
70歳以上の保険の選び方や注意点、公的医療制度などを解説しましたが、いかがでしょうか。
70歳以上の方は、老後生活と今後のライフスタイルを想像しながらの保険選びが大切です。
特に最近では、70歳の方でも。生命保険は遅くないので、ぜひ自分にぴったりな生命保険を選択してください。