急な転勤などでまだ賃貸契約が残っている中で引っ越さなければいけない時、気になるのが加入している火災保険の契約。
一般的には火災保険は2年間など期間を決めて加入するので、「途中解約したら違約金が発生するんじゃ…」と不安になってしまう方もいることでしょう。
引越しは手続きや処理などでお金が何かとかかりますから、早い段階で不安を解消しておきたいですよね。
そこでこの記事では、引っ越しの際に賃貸住宅の火災保険を途中解約する場合に違約金は発生するかについてわかりやすく解説していきます。
目次
火災保険とは
火災保険は賃貸物件を契約する際、加入が義務付けられていることが多い保険です。
火災保険に加入していれば、住居が火災の被害に遭った場合に補償を受けられます。
火災以外にも落雷や爆発、保険の種類によっては風災や水災なども補償されます。
また、火災保険は住まいの損害に備えるための保険であるため、建物だけでなく家具や家電も保険の対象です。
家具や家電などの家財を保険の対象にするためには、建物だけでなく家財も補償を受けられるよう設定する必要があります。
このように火災保険は、災害や家財の損害に備えて安心して生活するために非常に重要な保険です。
火災保険は途中解約しても特に違約金はない
結論から言うと、火災保険は引越しなどで契約期間中に途中解約しても、特に違約金は発生しません。
日本で一般的な火災保険は、保険料を掛け捨てするタイプで運営されています。
そのため既に保険料が支払われている状態で解約することになりますから、違約金という概念は発生しないんです。
携帯電話などでは契約期間中に解約すると違約金が発生するため、途中解約=違約金というイメージが定着していますが、火災保険では適用されませんので安心してください。
火災保険の途中解約の手続きとは?
火災保険の途中解約を行う際は、まずは保険会社や保険代理店へ連絡をして解約の旨を伝えます。
その後は、契約している保険会社の指示に従い解約の手続きを行うという流れです。
解約に必要なものは?
- 保険契約継続証
保険契約の継続を証明するものです。
保険証券が発行されない契約の場合は保険証券の代わりになります。 - 保険証券
保険証券とは、契約した保険の内容が記されている証書のことです。
契約後、保険会社から郵送されます。
保険証券には、契約した保険の補償内容や契約期間、保険料や解約返戻金などが詳しく記載されています。
保険に加入していることを証明できる書類なので大切に保管しなければなりません。 - 解約のための書類
保険会社から郵送されます。
どこに、いつまでに連絡する?
保険証券に記載されている保険会社や担当の保険代理店に連絡します。
解約返戻金の関係もありますので、退去日が確定したらすぐに連絡をして必要書類を郵送してもらいましょう。
電話で解約できる?
火災保険の途中解約の方法は、保険会社によって異なります。
電話で受付をして必要書類を郵送してもらい、記入したのち返送し手続きが終了するケースが一般的です。
また、ネットで受付をしている場合や電話のみで手続きが終了する保険会社もあります。
中には必要書類を持参のうえ代理店に行かなければならないこともあるので、手続きの方法は契約している保険会社に確認しましょう。
火災保険を途中解約すると解約返戻金がもらえる
火災保険は生命保険とは異なり掛け捨て型の保険ですので、違約金が発生しないため契約が失効するまで放置してしまう人もいます。
実は火災保険は契約を放置せずに、解約手続きを取れば一定の解約返戻金が受け取れるんです。
途中解約するとなると、残り期間分の火災保険の保障はなくなりますので、その期間分の保険料を多く保険会社は受け取ることになります。
保障していないのにもかかわらず、保険料を受け取るわけにはいかないため、解約手続きをすることで残りの契約期間数に応じて保険料が返還されることになるのです。
つまり残っている契約期間数が長ければ長いほど、戻ってくる金額も大きくなりますので、引っ越した後にはすぐに解約手続きを取るようにしましょう。
保険会社ごとの方法で1か月単位で計算されますので、一度保険会社にどれだけ返金されるのかを確認しておくことをおすすめします。
解約返戻金の受け取り方法
火災保険を途中解約した際の解約返戻金は、契約期間中の保険料振替口座や解約の際に指定した口座に振り込まれます。
解約から振り込みまでの期間は保険会社によって異なります。
翌営業日~1週間程度、遅くても2~3週間程度で解約返戻金は振り込まれるでしょう。
解約手続きを営業店で行った場合でも、その場で受け取れるケースは少ないです。
ほとんどの場合は振り込みになると解釈しておきましょう。
解約返戻金の計算方法は?
火災保険の途中解約は未経過料率を用いて返戻金が計算されます。
その他にも日割り計算や月割計算などもあり、保険会社によって計算方法は異なります。
未経過料率とは、保険の契約期間における経過年数や経過月数に応じて表示される係数のことです。
以下に2年契約の場合の未経過料率を経過年月ごとにまとめました。
(計算式の例…長期一括払い契約の保険料×未経過料率)
保険期間 | 2年契約 | |
経過年月 | 0年 | 1年 |
1ヵ月まで | 87% | 43% |
2ヵ月まで | 81% | 39% |
3ヵ月まで | 76% | 35% |
4ヵ月まで | 71% | 31% |
5ヵ月まで | 65% | 27% |
6ヵ月まで | 62% | 23% |
7ヵ月まで | 60% | 19% |
8ヵ月まで | 57% | 15% |
9ヵ月まで | 54% | 12% |
10ヵ月まで | 52% | 8% |
11ヵ月まで | 49% | 4% |
12ヵ月まで | 46% | 0% |
すべての保険会社がこの未経過料率を用いた計算をするとは限りませんが、この計算式で計算すると自身の返戻金のおおまかな金額が分かるでしょう。
具体的な金額は保険会社や担当の代理店に確認してください。
賃貸の火災保険の解約を忘れた場合はどうなる?
火災保険は掛け捨て保険でありながら解約返戻金が受け取れる保険であることを知っている人は少数派です。
そのため世間には賃貸契約を解消した後に、火災保険の契約を放置してしまう人が非常に多いです。
これから引っ越す人の中には、途中解約するのが面倒でそのまま放置してしまおうと考えている方もいるかもしれませんね。
以下では解約を忘れて放置した場合に発生する事態を、ケースごとに紹介しています。
年単位の契約更新なら放置しても問題ない
火災保険では2年単位で保険契約の更新手続きを取るのが一般的です。
そのため2年間の契約期間が過ぎた後に更新手続きを取らなければ、そのまま契約は消滅します。
契約が無くなれば保険料を支払う義務も保障もありませんので、特に何も不利益は生じません。
しいて言えば上でも紹介したように、保障がいらない期間の保険料が無駄になってしまう事態にはなりますが、支払った保険料が安ければリターンも少ないですので経済的に余裕のある方は特に気にする必要はないでしょう。
自動更新の場合は手続きしないと二重加入になる
火災保険は一般的に契約更新手続きが必要ですが、中には契約の更新忘れを防ぐために自動更新になっている場合があります。
入居時に決めることがほとんどのため、引っ越しの時には忘れていることがほとんどです。
自動更新は契約者の意思がなくても、文字通り自動的に契約が継続するシステムになっています。
次の賃貸契約で新しい火災保険に加入していたとしても、旧契約は継続しているので保険の二重加入状態になってしまいます。
二重に加入しているということは保険料を倍払っている状態になるので、無駄な出費を招いてしまいます。
契約期間が決まっていてもいなくても、面倒くさがらずに解約手続きをしておくことで知らないうちに損をするリスクを防げます。
賃貸住宅の火災保険を途中解約する際の注意点
これまで紹介してきたように、火災保険では契約期間中に保険契約を解約しても違約金が発生せず、むしろ解約返戻金がもらえる可能性があります。
しかし解約返戻金を目的にして無計画に解約手続きをしてしまうと、トラブルが発生してしまった場合に対応できないことも。
以下では、賃貸住宅の火災保険を途中解約する際の注意点についてまとめています。
火災保険の保障がない空白期間を作らない
途中解約した場合に受け取れる解約返戻金は、残りの契約期間が長ければ長いほど多くもらえるとお伝えしました。
しかし解約返戻金を多く受け取ろうとして、賃貸契約が続いている最中に解約して補償のない空白期間を作るのはNGです。
「火事が起きないように気を付ければいいじゃん」と思うかもしれませんが、部屋に損害が起きる時は他人の不注意が原因になることもあるんです。
もちろん部屋に損害が起きたとなれば原状回復義務がありますから、お金をかけて修復しなければなりません。
自分だけが気を付けていても他人の不注意までは予測ができません。
保険の保障が無ければ全額自分で修理費用を出すことになりますから、引っ越しどころではなくなってしまいます。
火災保険を解約するときには、賃貸契約が終了して新居へ入居したタイミングに合わせて、最後まで保障が適用されるようにしておくのがベストです。
契約期間が残り少ないと解約返戻金がない
火災保険を途中解約した場合にもらえる解約返戻金は、残りの契約期間数に応じて支払われます。
裏を返せば契約期間数が残り少ないと、解約返戻金がもらえない可能性があるということ。
火災保険を解約すれば返戻金がもらえるといった先入観で解約してしまった場合、手元にお金が戻ってこなくてがっかりしてしまうこともありますので、注意しましょう。
すべてを不動産会社に委託しない
火災保険を契約するときは不動産会社を介して手続きを行いますので、解約時も同様にできると考えがちですが、不動産会社によっては解約時の手続きは対応していないところもあります。
不動産会社に全てを委託してしまうと、手続きの漏れが出てきてしまう可能性もあるので、一度解約手続きに関して自分の目で確認することをおすすめします。
引っ越し先の火災保険は前の物件には適用されない
当たり前の話ではありますが、引っ越し先で新たに契約した火災保険は、たとえ契約者が同一でも前の物件には適用されません。
勘違いをして引っ越し先の火災保険を契約したタイミングで、前の物件の保険を解約してしまうことがないよう注意しましょう。
前の物件の火災保険は、必ず物件の契約終了日に解約になるよう手続きを行い、空白の期間を作らないように気をつけてください。
火災保険は引っ越し先でも引き継げる?
賃貸物件から持ち家に引っ越す場合は、賃貸物件で契約していた火災保険は引き継げません。
しかし、賃貸物件から賃貸物件への引っ越しの場合は契約を引き継げる可能性があるので、火災保険料は建物の構造や補償内容、建物所在地などに影響されて決定します。
そのため、今まで住んでいた物件と引っ越し先の物件の条件に相違がない場合は、契約を引き継げる可能性があります。
その際は保険会社に住所変更の手続きが必要になります。
火災保険の引継ぎができれば、あらたに火災保険を契約する手間もはぶけるので、保険会社や担当の代理店に確認してみるといいでしょう。
火災保険の解約手続きをして保険料の無駄をなくそう
いかがでしたか?
火災保険は契約期間中に途中解約したとしても、違約金は発生せずに契約者のタイミングで手続きが取れます。
保険料の支払い体系が掛け捨て型でありながら、残りの契約期間数に応じて解約返戻金が受け取れることもありますので、できる限り解約手続きを取ることをおすすめします。
一方で手続きが面倒な場合は、契約期間が定まっている場合は解約せずに放置していても、あとで契約が自動的に切れるので問題はありません。
しかし自動更新の場合はきちんと手続きを取らなければ、ずっと契約が続いてしまうのでどちらの契約更新スタイルかがわからないのであれば、とりあえず解約手続きをしてしまうのがベストです。
また解約の際には3点ほど注意すべき点がありますので、よく確認したうえで保険料の無駄をなくすために手続きを行いましょう。