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高齢者は保険加入が必要か不要か?高齢でも活用できる保険について
日本は高齢者向けの、公的医療保険制度が充実しているのに、わざわざ民間の保険に加入する必要があると思いますか?
高齢者が保険に加入する時には、現在働いているいわゆる“現役世代”よりも加入する時は注意が必要です。
保険に入る目的や、必要性が変わっていくので高齢者になってからもなお、将来のことを考えて保険に加入する必要があります。
そもそも、民間の保険と役割が重なりがちな、高齢者向けの公的医療保険制度について詳しく知っている方も少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、高齢者が保険に入るとき事前に確認が必要なことと加入時の注意点、おすすめの保険の概要と、高齢者が活用できる公的医療保険制度について、詳しくご紹介していきます。
高齢でも保険を有効活用することは可能です!
結論から言うと、高齢になってからでも保険を有効活用することが可能です!
現在加入している保険の見直しだけではなく、新しく保険に加入をすることもできます。
しかし、いきなりどんな保険に加入するべきなのかを検討するのではなく、まずは自分の生活にいくらお金がかかっているかを把握することが必要です。
独身なのか・結婚をしているのか・同居している子どもや孫の有無で、生活に必要なお金も変わります。
定年退職をしていて、再雇用制度を利用していない場合は、「毎月の年金収入」と「貯蓄を切り崩す」生活が必須です。
例えば、高齢者の夫婦2人暮らしの場合には、必要最低限の暮らしをするための生活費は、毎月2人で“約26万円”とされています。
それに対して、年金額が“21万円”となっているので、最低限の生活費を賄うことさえもできず、悠々自適のセカンドライフとは遠い生活を送らなければなりません。
いくら公的医療保険制度が充実していても、そもそもの生活費すら貯金を切り崩さなければならない状態なので、高齢者の負担を抑えられません。
高齢者が現金として受け取れる収入は、「年金」のみなので、医療費の負担を抑えたからと言って、生活が豊かになることはないので、民間の保険会社からの保険金が必要です。
高齢者になってからの生活を、より豊かにするためにまず、ライフプランの見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
ここからは実際に、どのような見直しが必要なのかご紹介していきます。
将来受け取れる年金はいくらなのか
自分の年齢から差し引いて、今後受け取れる「年金」が総額でいくらなのかを確認しましょう。
定年退職後に再雇用されていない限り、受け取れる「年金」だけがプラスの収支です。
現在の月の生活費が、「年金」の受給額よりも下回っているのであれば、年金だけで収支はプラスになるので、万が一の時に備える「貯蓄」も行えます。
現在の生活費・貯蓄・年金の収入比はどうなっているか
定年退職後の生活は基本的に、必要最低限の生活費の支払いと、現役時代の貯蓄、月ごとに受け取る年金の3つの収支があります。
3つの収支を合わせてプラスになっているのかマイナスになっているのかは、最低限把握しておきましょう。
マイナスになっていれば、毎月貯蓄を切り崩して生活しているということなので、万が一病気やケガになった時の、予期せぬ出費を支払えなくなる可能性もあります。
今のまま生活したら何歳まで継続できるのか
現在と同じ暮らしを継続して行った場合、何歳まで同じ暮らしができるのかを把握しておくことも重要です。
70代前半などの場合には、それ以上に長生きする可能性も十分に考えられるので、出費を減らすのか、収入を増やすのか、何らかの手段をとる必要があります。
高齢者向けの公的医療保険制度や民間の保険に加入することが、出費を減らす、収入を増やすという選択肢です。
ここからは実際に高齢者が加入するのにおすすめの保険の特徴をご紹介していきます!
高齢者が加入するのにおすすめ医療保険2つの特徴
高齢者はいわゆる“現役世代”とは保険に加入する目的が異なります。
“現役世代”は給与があるので、万が一病気やケガで働けなくなったときに備えて、保険に加入することがほとんどです。
高齢者の場合は、給与が無く年金と貯金で生活をしているので、働けなくなった時の保障ではなく、万が一の時の治療費や、亡くなった場合に遺族に財産を残すことを目的にしています。
年齢によって保険に加入する目的が変わるので、定年退職をしたタイミングで一度自分の契約している保険の見直しを、行ってみてはいかがでしょうか。
見直しをした結果、老後に向いていない保険や、“現役世代”向けの保険だった場合には解約や新たな保険の加入が必要です。
こちらでは新たな保険に加入をしたい高齢者の人におすすめの保険を2つご紹介していきます。
保障が一生涯続く終身タイプの医療保険
高齢になってから新たに保険に加入する場合は、保障が一生涯続く「終身タイプ」の保険に加入することがおすすめです。
後ほど詳しくご説明しますが、保険には保障期間が定まった「定期保険」と、保障が一生涯続く「終身保険」があります。
保険料が変わることなく、亡くなるまで継続して保障が続くので、高齢になってからの加入には「終身保険」がおすすめです。
定期保険は期間が定まっている分、基本の保険料を抑えることができますが、更新するたびに保険料が上がってしまいます。
何歳まで生きられるのかは、本人でも分からないので一生涯続く「終身保険」に入れば、加入時の保険料のまま変わらないので、家計もつけやすいのでおすすめです。
特約と呼ばれるオプションを可能な限りつけないこと
近年できた保険には、“特約”と呼ばれるオプションが充実しています。
特約が付いている保険は保障対象が広くなり、安心できますがその分保険料も高くなることがほとんどです。
高齢者には不要な特約が付いている場合もあるので、加入時には注意しましょう。
特約が多くついていても、保険料を支払い続けられるのならば問題はありませんが、今後何十年と加入し続けた場合も問題が無いか、長期的に検討する必要があります。
高齢で保険に加入する時の2つの注意点
先ほどは高齢者におすすめの保険を紹介しましたが、こちらでは加入する時に注意するべき注意点を2つご紹介します。
こちらも“現役世代”とは注意するポイントが異なるので、自分の契約している保険と照らし合わせて、確認してみてください。
若い時よりも高額な保険料
若者よりも高齢者の方が、病院にかかる回数が多いのは当然です。
その分高齢者が保険に加入すると、若者と比べ保険料は割高になります。
若い時に加入した「終身保険」や「定期保険」の場合は、加入当時の年齢で保険料を計算しますが、新たに加入する時や、「定期保険」の更新時の年齢で再度計算するので、注意が必要です。
保険に現在加入していない高齢者の人は、急な医療費の負担に備えられるメリットと、毎月割高な保険料を支払うデメリットを天秤にかけて検討してみてください。
そもそも加入できないこともあるので注意が必要
通常の医療保険加入時には、現在の健康状態を保険会社に伝える「告知」が必要です。
「告知」の内容によって、保険への加入ができないことがあります。
現時点で何らかの病気や持病を持っている人は、保険加入時に内容の確認が必要です。
生命保険ってどんな保険なの?
ここまでで、高齢者の保険加入についてご紹介してきましたが、おすすめしていた「生命保険」がどんな保険なのか、詳しくご紹介していきます。
ある程度の概要は理解しているとは思いますが、「生命保険」の中でも種類は様々なので、理解を深めておくことで、自分に最適な保険を見つけるヒントになるかもしれません。
「生命保険」は大きく分けると2つに分けることができ、ここからはそれぞれの保険について詳しくご紹介していきます。
被保険者が亡くなった時に保険金を受け取れる「死亡保険」
本人が亡くなった時、もしくは植物状態になった時に保険金を受け取れるのが、「死亡保険」です。
「死亡保険」加入の主な目的は2つあります。
- 残された遺族に財産を残しておくため
- 自分の葬儀代やお墓代のため
「死亡保険」も細かく分けると4つの種類があるので、それぞれについてご紹介していきます。
期間が定められた「定期保険」
「死亡保険」のなかでも、保障される期間が定められたものが、「定期保険」です。
保障されている期間が決まっているので、保障を手厚くしておきたいタイミングだけ加入をするという利用の仕方ができます。
例えば、子どもが生まれたばかりのタイミングで加入して、子どもが成長した時に別の保険に切り替えるなど、柔軟な活用ができることがメリットです。
保障期間が終了する時には、解約するか更新するかを選ぶことができます。
更新する場合には、更新時の年齢で再度保険料を計算するので、保険料が上がることがほとんどです。
亡くなるまで一生涯保障の「終身保険」
「死亡保険」のなかで、保障される期間や年齢ではなく、保険の対象者が“亡くなるまで”という一生涯の保障期間の保険が「終身保険」です。
加入後契約者が自ら解約しない限り、確実に死亡保険金を受け取れます。
解約した場合も、支払った保険料総額に見合った分の解約返戻金を、受け取ることができるのもメリットです。
契約時の年齢で保険料を計算し、その保険料から変わることが無いので、長期間加入することが確定している場合には、「終身保険」の方がおすすめです。
上記二つを組み合わせた「定期付き終身保険」
大きな保障が必要な期間だけ、定期保険の保障にしてその期間終了後には、一生涯の保障を受けられるというものが「定期つき終身保険」です。
定期保険と活用方法は似ていますが、子どもが生まれたばかりで万が一のことがあった時の保障を大きくしたいときだけ、定期保険込みでその後は、一生涯の保障を受けるという活用ができます。
保険金を複数回にわたって受け取れる「収入保障保険」
万が一の時に受け取れる保険金を一括ではなく、一定期間で分割して受け取れるのがこちらの「収入保障保険」です。
他の保険と異なり、保険金受給開始のタイミングによって、総受給額が変わります。
例えば、契約期間が10年間で万が一の場合には年間1000万円受け取れる契約だった場合
被保険者が亡くなったタイミング | 総受給額 |
契約の翌年 | 9000万円 |
契約から5年後 | 4000万円 |
病気やケガの時に保険金を受け取れる「医療保険」
ここまでは、保険金受給の対象が被保険者の「死亡」した時の保険についてご紹介してきましたが、ここからは「死亡」以外の時に保険金を受け取れる保険を紹介していきます。
代表的なものは、対象となる被保険者が病気やケガをした時に給付金を受け取れる「医療保険」です。
「医療保険」も保険金受給のタイミングや、期間によって種類が分けられているので、主な4つを紹介していきます。
期間内であれば保険金を受け取れる「定期医療保険」
定められた期間内での、病気やケガの治療費として保険金を受け取れるものが「定期医療保険」です。
死亡保険と同じく、保障期間が終了すると解約するか継続するか、選択する必要があります。
貯蓄が不十分で、万が一の時にまとまった治療費を払うのが難しい場合に加入する保険です。
基本的な医療保険で、保険金を受け取れるタイミングは3つあるので、ご紹介します。
- 入院した日数に応じた保険金を受け取れる「基本入院保険金」
- 手術をした時に基本入院保険金に応じた保険金を受け取れる「手術給付金」
- 全額自己負担する必要がある“先進医療”を受けた時の「先進医療給付金」
一生涯病気やケガの時に受け取れる保険金「終身医療保険」
上記の「定期医療保険」が定められた期間の保障だったのに対し、期間が定められておらず、一生涯の保障を受けられるのが「終身医療保険」です。
医療の発達で、長寿化が進む日本で近年増加している保険で、高齢になって健康リスクが増加した場合でも、保障を受け続けられます。
契約時の保険料のまま、一生涯保障を受け続けられる分、基本の保険料は割高ですが定期保険と異なり、保険料が増額することはないので、計画的な貯蓄が可能です。
病気やケガではなく“がん”治療に関して特化した「がん保険」
上記2つと異なり、保障期間に差があるものではなく、医療保険の中でも“がん”への保険に特化したものが「がん保険」です。
基本的な保障内容は医療保険と変わらず、がんになった時に保険金を受け取れます。
受け取れるタイミングは先ほど紹介した3つとプラスして2つ、計5つのタイミングで受け取れます。
保険会社や契約した保険によっても異なりますが、通常の医療保険と異なる保険金を抜粋して、2つ紹介します。
- がんだと診断された時点で受け取れる「がん診断一時金」
- 通院してがんの治療を受けた時に受け取れる「治療給付金」
病気やケガが原因で働けなくなった時に備えた「就業不能保険」
病気やケガが原因で、働けなくなった時に受け取れなかった分の給与をカバーしてくれる保険が「就業不能保険」です。
働いている人が保障の対象なので、定年退職した高齢者にとっては不要ですが、再雇用制度を用いて働いている場合には、検討しても良いでしょう。
病気やケガで入院などをしてしまうと、職場復帰までは時間がかかるので、復帰して収入が安定するまでの生活費を受け取れる保険です。
介護が必要になった時に保険金を受け取れる「介護保険」
契約した本人に、介護が必要になった時保険金を受け取れるのが「介護保険」です。
一括でまとまったお金を受け取れるものもあれば、月ごと・年ごとにわたって受け取れるものもあり、保険会社や契約内容によって異なります。
保険金を受け取れる条件は、介護認定の区分次第の場合もあれば、保険会社独自の基準を持っている場合もあり、加入時には確認が必要です。
高齢者の公的医療保険制度って何のこと?
高齢者の人におすすめの保険と、保険の概要についてご紹介しましたが、役割の被りやすい高齢者向けの公的医療保険制度についてここからは、説明していきます。
年齢によって被保険者の自己負担割合が変わる「国民健康保険制度」
会社の保険に加入している人や、生活保護を受けている方を除いた74歳以下のすべての人が加入する医療制度が「国民健康保険制度」です。
医療費の自己負担額を減らしてくれるという保険制度で、年齢によって負担額が異なります。
「74歳以下の人」と一括りになってはいますが、70歳~74歳の人はそれ以下の年齢の人と
医療費の自己負担分が異なるので、確認が必要です。
具体的には、70歳未満の人は医療費の自己負担分が3割、70歳~74歳の人は医療費の自己負担分が2割に減少します。
75歳以上を対象とした医療費の一部を負担してくれる「後期高齢者医療制度」
上記で説明した「国民健康保険制度」は74歳未満が対象なのに対して、75歳以上を対象としたものが「後期高齢者医療制度」です。
75歳を迎える誕生日当日から資格を取得でき、これまでに加入していた国民健康保険からは脱退し、新たに「後期高齢者医療制度」に加入します。
こちらの「後期高齢者医療制度」では、基本的に自己負担が1割です。
例外として、“現役並み所得者”としてみなされた高齢者は、自己負担額が3割になります。
“現役並み所得者”とは、住民税課税所得が145万円以上の被保険者のことです。
1か月の医療費が高額になったら払い戻される「高額療養費制度」
月ごとの一定以上の医療費を支払った場合に、上回った分の医療費を払い戻されるという制度が「高額療養費制度」です。
月ごとに定められた自己負担の上限が、70歳以上の場合は引き下げられます。
70歳以上の場合は、通院の場合も払い戻しの対象となり、年間で14万4000円を超過した分の医療費が、払い戻されます。
保険と公的医療保険制度の違いを理解して最適な選択をしましょう!
今回の記事では、高齢者にとって保険加入が必要かどうかや、高齢者におすすめの保険の紹介をしました。
併せて、「保険」と「公的医療保険制度」の役割の違いについても、ご紹介してきました。
- 「保険」:万が一、病気やケガ、死亡してしまったときに保険金や治療費を受け取れる制度。
- 「公的医療保険制度」:病院へ行った時に実際に支払う治療費が減額されるという制度。
保障されるタイミングとしてはどちらも、病気やケガをした時のためですが、それぞれの役割は若干異なります。
それぞれの役割が異なることを理解したうえで、自身の老後の生活を豊かにするために、高齢になってからの保険も、一度検討してみてはいかがでしょうか。