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正常分娩以外であれば医療保険で入院・手術保険金が給付される
医療保険では、健康保険等の公的医療保険の対象になる入院や手術に対して、保険金が給付されます。
正常分娩や経済的な理由による人工妊娠中絶は、治療目的ではないため、健康保険等の公的医療保険の対象外となってしまい、医療保険でも保険金は給付されません。
では、どんなときに保険金が給付されるのでしょうか。
妊娠から出産するまでの間
妊娠してから出産するまでの期間、さまざまなことが起こります。
妊娠初期に無理してしまうと、流産や切迫流産になることがあります。
悪阻(つわり)の度合いも人それぞれで、とてもつらくなることがあります。(重症性のある妊娠悪阻)
妊娠中毒症といわれる、高血圧症(妊娠高血圧症候群)になったり、糖尿病(妊娠糖尿病)になったりすることがあります。
まだまだ予定日には早いのに切迫早産になり、お腹がはってつらくなることもあります。
結果、早産になってしまうことも。
このような場合に入院治療すると、健康保険等の公的医療保険の対象となるため、医療保険での入院保険金の給付対象にもなります。
分娩時
分娩時にも、さまざまなことが起こります。
正常分娩に該当しない分娩(異常分娩)で出産した場合には、医療保険での入院や手術保険金の給付対象になります。
異常分娩には、
- 帝王切開:腹部と子宮を切開して退治を外科的に取り出す分娩
- 鉗子分娩:大きなスプーンのような医療器具で両側頬部を挟んで分娩
- 吸引分娩:頭部に吸引カップを装着して出産を手助けする
なども含まれます。
また、逆子での分娩(骨盤位分娩)や双子・三つ子などの分娩(多胎分娩)などの分娩も、異常分娩に含まれます。
※分娩中の通常の範囲内での会陰切開や子宮収縮薬(陣痛促進剤)を使用した場合、その後の経過に異常がなければ、正常分娩とみなされます。
妊娠中は、ウィルスや細菌などの病原菌に対する抵抗力が弱まっているため、感染症にもかかりやすいです。
風邪やインフルエンザであっても、重症化・長期化し、肺炎を起こしてしまうことがあります。流産・早産を誘発する原因にもなるので、注意が必要です。
妊娠・分娩は病気ではありませんので、正常な妊娠・分娩では健康保険等の公的医療保険も医療保険も対象外になりますが、上記のようなことが発生したときには、どちらも対象になります。
医療保険に女性入院特約を付加している場合は、流産・早産、帝王切開などの異常分娩、多胎分娩なども対象になっていますので、入院給付金にプラスして女性入院給付金が支払われます。
※医療保険に加入するときに告知事項があり、特別条件(異常分娩2年不担保など)がついている場合は、給付されない場合があります。保険証券で内容を確認しておきましょう。
健康保険等の公的医療保険の対象になると高額療養費制度も使える
健康保険等の公的医療保険制度は、入院や手術をしたときの医療費の一部を保障してくれる制度です。
年齢や所得によって医療費自己負担割合が異なり、小学校入学~69歳以下の方の場合の自己負担割合は3割です。
医療費が100万円かかったとしたら、医療機関で自分が負担する金額は30万円になります。
「高額療養費制度」は、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の自己負担額が限度額を超えたときに、超えた金額が支給される制度です。
年齢や所得によって自己負担限度額は異なります。
例えば、69歳以下で年収が500万円の場合の1カ月の自己負担限度額(世帯単位)は、80,100円+(医療費―267,000円)×1%で計算されます。
医療費が100万円かかったとしたら、
が自己負担限度額となり、医療機関の窓口で3割負担の30万円を支払ったら、高額療養費の申請をすることで、30万円―87,430=212,570円が超えた分として支給されます。
世帯単位なので、世帯に同じ健康保険等の公的医療保険に加入している方がいれば、合算することができます。
世帯で医療機関に支払った金額を計算し、申請できる場合は申請するようにしましょう。
※ここでの医療費とは、健康保険等の公的医療保険の範囲内の金額です。入院中の食事代や差額ベッド代などは計算に入れません。
健康保険等から事前に「限度額適用認定証」を交付してもらうことで、窓口で支払う段階で自己負担限度額までの支払にすることができます。
事前に帝王切開をするなどがわかっている場合には、入院する前に健康保険等で「限度額適用認定証」を交付してもらい、入院手続き窓口に提出しておくことをおすすめします。
公的医療保険制度から給付される出産育児一時金と出産手当金
健康保険等の公的医療保険の被保険者および被扶養者が出産したときには、申請することで1児につき42万円の「出産育児一時金」が支給されます。
(産科医療保障制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40.4万円となります。)
1児につき42万円なので、多胎児を出産した場合には、出産した胎児数分だけ支給されます。
正常分娩や経済上の理由による人工妊娠中絶は、健康保険等の公的医療保険の療養給付は対象外ですが、出産育児一時金の対象にはなります。
健康保険(会社員等)の被保険者期間が1年以上あるものが退職し、被保険者の資格を失ってから6カ月以内に出産した場合には、その健康保険の方から出産育児一時金が支給されますので、申請するときに注意してください。
「直接支払制度」を利用すると、出産育児一時金を健康保険等の公的医療保険から医療機関に対して直接支払うことできるため、医療機関の窓口で支払う出産費用の負担を軽減することができます。
直接支払制度を利用する場合には、出産を予定している医療機関に直接支払制度の利用に合意する文書の同意を退院までにしておく必要があります。
出産にかかった費用が出産育児一時金の支給額の範囲内であった場合は、その差額を健康保険等の公的医療保険へ請求することができます。
出産育児一時金の支給額を超えた場合は自己負担
また、出産にかかった費用が出産育児一時金の支給額を超える場合は、その超えた額を医療機関に支払うことになります。
一部の医療機関では、被保険者の代わりに医療機関が出産育児一時金を受け取る「受取代理制度」を利用できます。(出産予定日まで2カ月以内の方に限ります。)
「直接支払制度」「受取代理制度」どちらの制度も利用せず、ご自身で出産育児給付金を受け取ることも可能です。
医療機関での出産費用をクレジットカードで支払い、出産育児一時金を個人で受け取ることでクレジットカードのポイントをためることができます。
出産手当金が受け取れる期間
健康保険(会社員・公務員)の被保険者が、出産のために会社を休み、報酬をもらえないときには、「出産手当金」が支給されます。
これは出産の前後に安心して休養できるように設けられた制度です
健康保険に加入していることが条件なので、アルバイトやパートの方でも給付を受けることができます。
※国民健康保険にはない制度なので、自営業やフリーランスの方は対象外になります。
「出産手当金」が受けられる期間は、出産の日(実際の出産が予定日後のときには出産予定日)以前の42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間について支給されます。
出産予定日より実際の出産日が遅れた場合には、その日数分が支給期間に加わります。
出産を機に退職を考えている方は、退職日によっては支給されなくなってしまうので、注意が必要です。
①退職日までに1年以上健康保険の被保険者期間があること。②出産手当金が受けられる期間内に退職日があること。この2つを満たすように退職日を決めないといけません。
出産手当金の日額は、
で計算されます。
例えば、支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額が30万円で、出産予定日より4日遅れて出産した場合、出産手当金の日額は、30万円÷30×2/3=約6670円、出産手当金が支給される期間は、42日+4日+56日=102日間となり、合計で680,340円の給付を受けることができます。
会社から出産手当金の日額より多い報酬日額が支給される場合は、出産手当金は支給されません。出産手当金の日額より少ない報酬日額が支給される場合は、差額が支給されます。
育児休業中の生活保障として育児休業給付金が支給される
「出産手当金」の支給期間が終了すると育児休業に入ります。育児休業中の生活保障として、「育児休業給付金」という制度があります。基本的には、産前産後休暇(産前6週~産後8週)が終了した翌日から、子どもが1歳になる日(誕生日の前日)までが支給期間です。
育児休業終了予定日の2週間前までに申請することで期間を延長することができます。
保育園に入れない、配偶者の死亡・負傷・疾病等で養育困難、配偶者との離婚による別居、新たな妊娠により6週間以内に出産予定があるなど、一定の条件を満たす場合には1歳半または2歳まで延長できます。
パパが育児休業を取得する場合には、「パパママ育休プラス制度」を利用することで、育児休業給付金の支給期間を1歳2カ月まで延長できます。
「育児休業給付金」は、雇用保険の被保険者で、育児休業を開始した日からさかのぼり2年間で就業日(賃金支払基礎日数)が11日以上ある月が12か月以上あることが条件です。
また、給付期間中に休業開始前に受け取っていた賃金の8割以上の金額をもらっていない、期間中の就業日数が月10日以内であるという条件もあります。
「育児休業給付金」は2カ月ごとに決められた金額が給付されます。
給付金支給額は育児休業開始から180日までは、
育児休業開始6カ月以降は、
「育児休業給付金」はハローワークへ申請し、その後も2カ月に一度の申請書の提出が必要になります。
まとめ
出産にはお金がかかります。仕事も休まないといけないため、出産後の生活費も大変になります。
医療保険で給付される入院や手術を確認し、健康保険等の公的医療保険からの給付金や雇用保険から給付金を確認し、申請し忘れないようにしましょう。