生命保険は被保険者が死亡時に保険金が支払われる保険ですが、被保険者よりも先に受取人が亡くなってしまうケースも。
受取人が死亡すると、受取人の相続人が受け取る権利を引き継ぐのが一般的です。
被保険者側としては、本来受け取ってほしくない人にまで自分の保険金が渡ってしまいますから、できるだけ早く受取人を変更したいはず。
しかし勝手に変更していいかわからない!という方もいるでしょう。
実は受取人が死亡しても、変更手続きは可能なのです。
そこで今回は、受取人が被保険者よりも先に死亡したときの変更について、わかりやすく解説していきます。
目次
受取人手続きをしないままだと相続人が保険金を受け取る
生命保険では、受取人が被保険者よりも先に死亡すると、受取人の法定相続人が保険金を受け取る権利を引き継ぎます。
実は保険法第46条にて、「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡した時は、その相続人の全員が保険金受取人となる」と定められているのです。
そのため、すぐ手続きをしないと、受取人を本来決めていた人とは異なる人物に渡りかねません。
相続人が保険金を渡しても問題ない人であればいいのですが、関係の悪化している人物や全く関連のない人にまで届いてしまうのは不本意ですよね。
相続人には誰が指定される?
そもそも相続人とは正確には「法定相続人」のことを指します。
法定相続人とは、配偶者と血族のみが指定されます。
配偶者は生活保障の観点から相続人に必ず指定されます。
しかし血族は優先順位が設けられており、血のつながりが薄いほど順位は下がります。
法定相続人の順位は以下の通りです。
- 第1順位:子供
- 第2順位:父母
- 第3順位:兄弟姉妹
第1順位がいなければ第2順位が法定相続人として指定されますが、第1順位がいるのなら第2、第3順位の血族は法定相続人になれません。
そのため、受取人に配偶者と子供がいるときは、父母や兄弟姉妹は相続権が認められません。
保険金は相続人全員で均等に分けられる
保険金は相続人が全額もらえるわけではありません。
相続人全員で均等に割り振られます。
そのため、もし受取人が配偶者以外に指定されてると、兄弟に分割されるかも…。
妻子がいたとしても、受取人の相続人として均等に割り振られますので、家族に十分な保険金を残せないことだってあるのです。
受取人が死亡した時に受取人変更はできる
受取人が死亡したとき、思いもよらない人に自分の保険金が行かないように、変更手続きを取れます。
受取人の変更手続きは詳細な部分においては保険会社によって違いはあるものの、一般的に以下の3ステップで変更できます。
- ①保険会社へ連絡して書類を送付してもらう
- ②必要書類をそろえて提出
- ③受取人変更の通知が届いて完了
以下で詳しく解説していきます。
①保険会社へ連絡して書類を送付してもらう
保険金の受取人変更手続きのために、加入している保険会社に契約者が変更の連絡を入れましょう。
一般的に、電話か来店窓口で連絡できますが、窓口によって土曜日でも受け付けているかどうかが変わるので注意してください。
書類を送ってもらうには、保険証券の番号確認が必要なため、手元に準備しておくとスムーズです。
手続きを行いたい旨を担当者に伝えると、手続きに必要な書類を送付してもらえます。
数日以内に届きますので、確認しておきましょう。
②必要書類をそろえて提出
受取人手続きに必要な書類がそろったら、手続き方法や請求内容について確認してください。
保険会社指定の名義変更請求書に必要事項を記入したら、契約者の公的証明書のコピーを添付して返送します。
公的証明書は健康保険証、運転免許証、パスポートなどが公的に認められているものが該当します。
③受取人変更の通知が届いて完了
受取人変更の手続きが完了すると、通知が届きます。
届いた通知書は変更の証明になりますので、今後のためにもしっかりと保管しておきましょう。
生命保険の受取人を変更するときの注意点
生命保険の受取人は金銭も絡みますし、デリケートな問題ですので注意すべき点をしっかり把握しておかなければいけません。
変更のときの注意点は簡単にまとめると、以下の4点です。
- 受取人は2親等までと決まっている
- 同性婚・事実婚は条件アリ
- 変更は被保険者の同意が必要
- 契約者死亡なら法的な遺言で変更可能
以下で詳しく解説していきます。
受取人は2親等までと決まっている
生命保険の受取人は2親等までと決められている、注意が必要です。
もしお世話になっている人に贈りたいときでも、範囲外であれば不可能ですから注意しましょう。
2親等までとは、1親等である本人と配偶者の両親と子供、そして2親等である祖父母と兄弟姉妹、孫を指します。
これ以外の親族に関しては受取人変更手続きにおいては指定できませんので注意して下さい。
同性婚・事実婚は条件アリ
中には同性のパートナーや内縁関係など、法的に婚姻関係や親族関係を結んでいない人を受取人に指定したい!と考える人もいるはずです。
同性婚・事実婚の人を受取人に指定するには以下の条件が課せられます。
- 保険会社の定める期間同居している
- 保険会社の定める期間に生計を共にしている
- お互いに配偶者がいないこと
この3点をクリアすれば、婚姻関係や親族関係を結んでいなくても、生命保険の受取人として指定できます。
しかし条件を証明できる書類を用意しなければいけませんので、戸籍謄本や住民票、収入証明書などを用意しておくとスムーズです。
変更には被保険者の同意が必要
受取人変更手続きを行えるのは契約者のみですが変更手続きをするには被保険者の同意が必要になります。
そのため被保険者の了承が取れていないまま手続きは出来ません。
もし被保険者の同意がないまま勝手に変更したら、手続き前の受取人に渡ります。
契約者が死亡している場合は法的な遺言で変更可能
契約者が死亡しており被保険者が存命しているときは、受取人変更は契約者が生前残した法的に効力のある遺言書があれば契約者でなくとも受取人を変更できます。
このケースでは契約者の相続人が保険会社に連絡し変更手続きを代行できます。
しかし粗末な遺言書で法的拘束力が認められないときは変更に応じてもらえないこともあるので、注意が必要です。
また、契約者が死亡したケースでも、被保険者に了承を取る必要があることを忘れないようにしましょう。
注意!受取人変更すると保険金にかかる税金が変わる
保険金の受取人は被保険者の同意があれば、条件こそあるものの変更可能であることをお伝えしてきました。
しかし契約者・被保険者の関係によっては、適用される税金が変わります。
適用される税金によっては、実質的に受け取れる金額が減ることもあるので、受け取らせたい人を決めるときは税金の種類も考慮しておくことをおすすめします。
契約者と被保険者が同じなら相続税
変更後、生命保険の契約者と被保険者が同一なら相続税です。
保険金の受取人が被保険者の法定相続人、例えば被保険者の子供と妻だったケースにおいては、法定相続人の数×500万円の非課税枠が設けられます。
しかし被保険者の法定相続人以外なら、非課税枠が設けられずに全額に相続税がかかります。
そのため法定相続人以外なら、税額控除を受けられません。
税額控除が受けられないことに加えて2割相続税が加算されますので、実質受け取れる金額は少なくなります。
契約者・被保険者・受取人が異なる場合は贈与税
関係者すべてが異なるなら贈与税がかかります。
贈与税が適用されると、110万円の基礎控除を利用できます。
そのため受け取った死亡保険金から110万円を引いた額が贈与税の課税対象額になります。
契約者・受取人が同一人物なら所得税
保険の契約者・受取人が同一人物なら所得税がかかります。
死亡保険金は一時所得として認められるため、税額控除を受けたうえで年間の総所得額に算入されていきます。
死亡した受取人に相続人がいないとどうなる?
もしも死亡した受取人に法定相続人がいない場合、つまり全く身寄りがないと、国庫に保険金が入ります。
裁判所によってえらばれた相続財産管理人が、財産整理を行って他の相続財産とともに保険金を国庫に送ります。
せっかく活用してもらおうと設定しても、国庫に入るのであれば意味がなくなってしまいますので、死亡時はすぐに変更しておくのが大切なのです。
受取人が死亡したらすぐに変更手続きをしよう!
いかがでしたか?
受取人が死亡したら、保険法にのっとって受取人の法定相続人が保険金の相続権を受け継ぎますので、当初予定しなかった人に渡ることも。
そのため、死亡後すぐに変更手続きを行うようにしましょう。
手続きは契約者が被保険者の同意を得て行わなければなりませんが、手続き自体は簡単です。
しかし手続き後の受取人と契約人・被保険者の関係性によっては、保険金にかかる税金が変わりますので、実質的な受取額が少なくなる可ので注意が必要です。
ここで紹介した様々な条件を把握して、適切な人に受取人変更しましょう。