日ごろ入院する機会は少ないため、いざ入院してみて医療費を確認してみたら自分の支払い能力を超えてしまった…なんて方もいるかもしれません。
一度の入院で平均20万円程度、入院期間が長期化する場合にはさらに費用がかかります。
しかし入院しないと体調に影響が出てしまいますから、支払うのが難しくても入院を余儀なくされることもあります。
実は皆さんの加入している健康保険制度やその補完の公的保障を利用すれば、入院費用を軽減することが可能になります。
今回は入院費用が払えない方向けに、入院中の医療費軽減に役立つ6つの公的保障を紹介していきます。
目次
入院費用が払えない方向け!医療費負担軽減に役立つ6つの公的保障
入院費用が払えない方は、以下の6つの公的保障の利用を検討してみてください。
- 高額療養費制度
- 高額療養費貸付制度
- 限定額適用認定証
- 傷病手当金制度
- 自立支援制度
- 一部負担金減免制度
以下で詳しく解説していきます。
上限負担額以下は払い戻し!高額療養費制度
高額療養費制度は、世帯の収入に応じてひと月に支払う医療費の上限金額が定められ、上限を超えた金額は払い戻しを受けられる制度です。
入院時の受付で案内されることが多く、企業の社会保険や国民健康保険に加入している人であれば利用可能です。
69歳以下であれば、以下の適用区分に分けられ、ひと月の上限額が定められています。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
---|---|---|
ア | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
イ | 年収約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
ウ | 年収約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
エ | ~年収約370万円 | 57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
(引用:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆様へ(平成30年8月診療分から)」)
一般的な平均演習はウに該当しますので、約8万円程度が上限金額になると考えて問題ないでしょう。
健康保険適用外の治療は対象外
高額療養費制度は健康保険あるいは国民健康保険に加入している人に対して適用される制度ですので、健康保険適用外の治療は制度の対象外になります。
健康保険適用外の治療は、美容整形などの緊急性を要しない自由診療や、先進医療など国で健康保険適用が認められていない治療が該当します。
健康保険適用外の治療は全額自己負担になる+高額療養費制度が利用できないことで、負担に感じてしまうかもしれません。
差額ベッド代や入院中の生活費も対象外
入院期間中の差額ベッド代や入院食や入院中の衣服代などの生活費も、高額療養費制度の対象外になります。
差額ベッド代は自分で申請していない限り、病院側の都合で有れば支払う必要はありませんが、知らずに負担してしまうこともあります。
本当に差額ベッド代が必要かを病院に確認することをおすすめします。
払えない分を無利子で借りられる!高額医療費貸付制度
高額療養費制度は制度の利用申請を行うことで、申請から約3か月程度で払い戻しが受けられますが、一度すべて医療費を建て替える必要があります。
高額医療貸付制度を利用すれば、高額療養費制度の申請で払い戻しを受けられる金額の8割~9割の貸し付けを受けられます。
また貸付時には無利子になるので、利子分の返済に困る必要もありません。
約1割を一時的に負担するだけで済むので、手元にすぐにお金が用意できない場合でも、利用可能です。
高額医療費貸付制度を利用するには、加入している健康保険の運営元に、以下の書類を送付すればOKです。
- 医療官発行の保険点数記載のい医療費請求書
- 保険証の写し
- 高額医療費貸付金借用書
- 高額療養費支給申請書
返済の際は振込を行いますので、各健康保険組合に確認してみてください。
窓口負担を軽減!限定額適用認定証
入院前に限定額適用認定証を提出すると、医療費の窓口負担を認定証に記載されている金額にとどめられますので、窓口での負担額を軽減できます。
高額療養費制度や高額医療費貸付制度を利用しなくても、窓口負担を軽減可能です。
入院時に高額療養費制度と同時に案内を受けられます。
限定額適用認定証を受け取るには、加入している健康保険組合に連絡して申請を行う必要があります。
1か月ごとに取得が必要になりますので、長期入院をされる際は定期的に申請を行いましょう。
また、90日以上の入院で入院時の食事負担額の軽減を受けることも可能です。
働けない期間の収入!傷病手当金制度
入院期間中の生活費や家賃などは、サラリーマンや公務員であれば傷病手当金制度を活用できます。
健康保険組合に加入している場合に利用できる制度で、3日間連続で休んだ後も仕事ができない状態で、所定の病状を満たしている場合に適用されます。
最長で1年6か月間適用されて、給与の2/3程度を毎月受け取れます。
毎月の給料よりは少なくなってしまうものの、支給を受けられないよりかはマシでしょう。
支給申請を行うには、所属している企業に支給申請を行い、支給申請書に重要事項を記載して健康保険の組合に返送しましょう。
国民健康保険に加入している方は、傷病手当金を売られないので、注意が必要です。
所定の病気で自己負担限度額が適用!自立支援制度
精神疾患や白内障の視覚障害など、所定の病気にかかっていて基準を満たしている方は、自立支援制度が利用できます。
治療に係る自己負担額の限度額が設定されますので、窓口での実質負担を軽減できます。
ただし自立支援制度は、制度適用対象の病院のみで利用可能です。
近くの病院や入院予定の病院が対象になるかを事前に確認しておくことをおすすめします。
国民健康保険のみ適用!一部負担金減免制度
一部負担金減免制度は、国民健康保険のみ適用される制度です。
病気やけがで長期入院をした場合は、申請を行うことで一定期間の医療費の軽減などの措置が取られます。
免除や支払額の減額、あるいは支払い猶予の3つの対応のいずれかがとられます。
申請窓口は各地方自治体にありますので、入院前に役所で一度確認してみましょう。
ただし申請したらずっと負担金が減免されるわけではなく、利用期間が3か月と制限されている点は注意が必要です。
長期入院には対応できませんので、そのほかの方法と組み合わせられるかも、窓口担当者に問い合わせてみましょう。
10万円を超える医療費がかかったなら確定申告すると税控除が受けられる
もし上記の制度を使っても、年間で10万円以上の医療費がかかることもあります。
年間で10万円を超える医療費がかかった場合は、確定申告を行うと税控除が受けられます。
ただし医療保険や生命保険の保険金、健康保険制度で差し引かれた高額療養費分など公的保障でもらった金額は、控除の対象外になりますので注意が必要です。
医療費控除を受けるためには、毎年2月に行われる確定申告を行う必要があります。
医療費の控除を受けるには、医療費の領収書が必要になることもありますので、きちんと保管しておくことをおすすめします。
最近ではネットから確定申告を対応してもらえることもありますので、活用してみてください。
入院費用が払えないときはどんな対応がとられる?
入院費用が支払えないときは、以下の3つの対応がとられる可能性があります。
病院側から支払の催促が来る
何も連絡していない状態で入院費用を支払っていない場合には、病院側から支払の催促が来ます。
支払いの催促をうけて支払えないと伝えても、すぐに追い出されるわけではありませんが、退院をすすめられることもあります。
医療機関側は金銭的な余裕がないからと治療を中断することは行いませんが、支払を踏み倒し続けていると病院側から治療上の措置が取られる可能性もあります。
保証人に入院費支払いが求められる
入院時にはもしも入院費用の踏み倒しにあったときに備えて、保証人のサインを求められることがあります。
入院費用の支払いに応じない場合には、保証人に連絡がいき、代わりに費用を支払うことが求められます。
保証人に指定するのは、原則親戚など連絡の取れる血縁者がほとんどですので、親族間の関係性悪化にもつながります。
病院によっては裁判に発展することも
病院によっては入院費用の支払いが受けられずに何の連絡もない場合には、弁護士を通じて支払いの裁判を起こされることもあります。
入院費用を連続して踏み倒そうとしたり、支払える能力があるにもかかわらず何にも応じないと、これらの措置が取られることになります。
入院費用の踏み倒しで裁判に勝てる可能性はまずありませんから、入院費用に加えて裁判費用も請求されます。
保証人からの支払いを受けられなかったときも同様の対応になるので、注意が必要です。
入院費用が払えない場合には病院側に連絡!分割払いが認められる可能性アリ
もしも入院費用が支払えないことが分かった場合には、すぐに病院に連絡して事情を説明しましょう。
病院側の担当者との協議の結果、分割払いが認められるケースもあります。
何も連絡しないでいると、上記の3つの対応を取られるので、面倒くさくても一度相談することをおすすめします。
入院費が払えないなら可能な限り公的保障を利用して負担を軽減しよう
いかがでしたか?
入院費用が払えない場合でも、加入している健康保険の制度を利用すれば、高額な入院費用でもある程度軽減できます。
建て替え費用がなくても窓口負担を最低限に抑えることも可能なので、わからないことがあればお住まいの自治体に問い合わせてみて下さい。
また、踏み倒しを行うと家族ばかりではなく親族にまで迷惑をかけてしまいます。
入院費が払えないのであれば、病院に問い合わせて分割払いなど支払いを待ってもらえないかを確認してみましょう。
公的保障は健康保険料をきちんと支払えれば利用できる制度ですので、有効活用していきましょうね。