病気やケガで入院する場合、身体の状態によってはタクシーを利用しなくては病院へ行く事が出来ないという事もあるかもしれません。
そんな時公的医療保険制度や民間の医療保険で請求する事も出来る可能性があります。
そこで今回は、様々な保険とタクシー代について解説していきます。
目次
公的医療保険制度ならやむを得ない場合認められる
まず公的医療保険制度のお話からして行きます。
公的医療保険制度には、国民保険や健康保険があり病院を受診した際に提出するだけのものと思っている人もいるのではないでしょうか。
しかし公的医療保険制度には、その他の給付を受けることが出来ることをご存じでしょうか。
病院で支払い負担額が決まっているのは「現物給付」と言います。現物支給の他には現金給付があり、タクシー代は現金給付になります。
タクシー代は「移送費」として計上され、申請する際には必要な書類がいくつか必要となります。
それぞれを以下で解説します。
移送費として計上される
公的医療保険制度でタクシー代は、移送費として計上されます。
病気やケガの影響で、医師が緊急的にも一時的にもタクシーの利用が必要と判断し移送された場合に、現金支給として給付を受けることができます。
ただ移送費として計上するためには、3つの条件をクリアしている必要があります。条件は以下の通りです。
- 移送の目的の療養が、保険診療として適切であること
- 患者が療養の原因である病気やケガにより移動が困難であること
- 緊急・その他、やむを得ないこと
移送費として支給されるのは「最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の旅費に基づいて算定した額の範囲での実費」と決まっています。
健康保険組合などに書類を提出する必要がある
移送費として計上する場合には、健康保険組合などに書類を提出する必要があります。
移送費を申請する際にそろえるべき書類は
- 被保険者証
- 印鑑
- 移送を必要とする医師の意見書
- 移送にかかった費用の領収書原本(移送区間、距離のわかるもの)
- 振込先の口座が確認できるもの(通帳等)
- 個人番号が確認できるもの(個人番号カード、個人番号通知カード等)
となっています。わからないことがある時や、必要書類に関しての疑問がある場合には健康保険窓口に相談してみましょう。
民間の医療保険でタクシー代を請求出来ることも
次に民間の医療保険についてお話します。民間の医療保険には「入院給付金」や「手術給付金」などの状況にや加入している保険に合わせて、保険金が給付されます。
民間の医療保険で給付されたものに関しては、使い道に制限がなく自由に活用することができるので、もちろんタクシー代に充てることもできます。
しかしタクシー代の支給はありません。
支給された手術給付金や通院給付金を自由に活用できる
民間の医療保険には、入院や通院・手術などを受けると給付を受けられる保障があります。
これらに加入し毎月保険料を支払うことで、もしもの時の医療費などに充てることが出来るのが、医療保険です。
医療保険に加入して受け取った給付金は、使い方に制限がないため自由に使うことができます。
そのためタクシー代として利用することももちろんOKです。
受け取った保険金を移動費に充てることもできるので、もしタクシー代が高くついた際には保険金を利用しても良いでしょう。
タクシー代としての支給はない
ただ民間の医療保険にはタクシー代の支給はないため、あくまでも入院や通院・手術などの給付金をタクシー代に充てる方法しかありません。
通院のタクシー代は医療費として控除の対象
ここからは医療費控除についてお話して行きます。
医療費控除とは「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告にて申告をすることで控除を受けることが出来る物の事を指します。
この医療費控除の中で、バスや電車でかかった交通費は医療費控除の対象ですが、タクシーに関しても、所定の条件を満たした場合には医療費の控除の対象となります。
医療費控除の対象となるのは、条件を満たした場合のみとなるので、条件は以下で解説していきます。
医師の指導があれば認められる
まず医師の指導が必要となります。タクシー代を医療費の控除の対象とする場合には、先ほどの公的医療保険制度と同様に医師が必要と判断する必要があります。
これは深夜で公共交通機関が動いていない場合や妊婦の陣痛が来た時などが医療費控除の対象として認められます。
あと緊急時や一時的でも医師が必要と判断した場合には、医療費控除の対象となるので「公共交通機関では不便」「タクシーのほうが楽」などの理由では、対象外となることを理解しておきましょう。
ただし、医師の指示書を提出する必要があります。
公共交通機関を利用できないなら医療費として計上可能
先ほども少し触れましたが、公共交通機関を利用できない状況と判断されれば医療費控除の対象となります。
これは公共交通機関を利用できないケガや病気など、病状から見てタクシー利用が必要となった場合に、医療費として計上することが出来るというものです。
陣痛が突然始まったなどがその対象となります。
領収書がないと認められない
医療費として計上する場合には、領収書が必要となります。
タクシーの場合には、領収書を出してもらうことができるので、出してもらった領収書をきちんと保管しておきましょう。さ
らにその際に、タクシーを利用しなければいけなかった理由も合わせて記載しておくようにしましょう。
このように医師が指示した場合や公共交通機関の利用が出来ない病状の場合のみ、医療費控除の対象となります。
全てのタクシー代が医療費控除の対象となるわけではありません。
タクシーを利用することが必要と判断された場合のみ、医療費控除の対象となることをきちんと理解して、申告の際に必要な書類を保管しておきましょう。
医療費控除の対象外になる交通費
医療費控除の対象となる条件についてお話しましたが、控除対象外となる交通費について解説します。
タクシー代と同様に、病院に行くのに自家用車を利用した際にガソリン代などの燃料費も対象となると思っている人もいるかもしれませんが、ガソリン代などは対象外となります。
また病院などの駐車場を利用した際の駐車料金や入院のお見舞いやお世話に関しての付き添い者の交通費も、対象外となります。それぞれ詳しくお話して行きます。
ガソリン代などの燃料費
自家用車を利用して病院へ行った際の燃料費に関しては、控除の対象外となります。
これは、医療費控除の対象が「人的役務の提供の対価」として支払われたものに限定しているからです。
自家用車で病院へ行った場合には、購入や利用に対する対価として判断されるため控除の対象外となります。
燃料費と同様に高速代も、医療費控除の対象外となります。
駐車場代
上の燃料費と同じく、駐車場代の医療費控除の対象外となります。
理由は同様で、他者から受けたサービための支払いとならないからです。
電車やバスなどは、運転手や会社のサービスに対する支払いとなりますが、自家用車の駐車料金はその条件を満たしていないので、医療費控除の対象外となるのです。
付き添い
付き添いの人の交通費も基本的には医療費控除の対象外となります。
医療費控除の対象となるのは、1人で通院するのが難しい場合のみです。例えば、高齢者や幼い子どもなどがその対象となります。
高齢者や幼い子どもなど、1人で通院するのが困難とされる人の付き添い者に限り医療費控除が受けられますが「1人で心配だから」などの理由での付き添いでは対象となりません。
また、高齢者や子どもが入院している場合のお見舞いでは本人の通院ではないため、医療費控除の対象外となります。
医療費控除の対象外となる交通費に関する解説をしました。基本的には高齢者や幼い子どもなど、1人での通院が困難人の通院場合のみ、付き添い者も医療費控除の対象となります。
しかし自家用車の燃料代や高速代・駐車場代などは対象とならないことを覚えておきましょう。
医療費控除は確定申告が必要
ここまで医療費控除の対象の条件を中心にお話してきました。
実際に医療費控除を受けるには、確定申告が必要となることは多くの人がご存じなのではないでしょうか。
この確定申告に関しては、医療費に限らず難しくてよくわからないという人も多いでしょう。
そこで医療費控除の申告の手順を解説します。
確定申告の手順
確定申告の手順は次の通りです。
必要書類を揃える
医療費控除の確定申告には「確定申告書」と「医療費明細書」が必要となります。
この書類を受け取ることができるのは、税務署の窓口か国税庁のホームページです。
医療費明細を作成する際に、また1年分の医療費に関する領収書が必要となります。
また勤め先から医療費通知が届いている場合にはそれも必要となります。
医療費明細に記載
医療費明細には「医療費通知に関する事項」と「医療費の明細」の2つに記載する必要があります。
これらを医療費通知に則って、自己負担額の記載を進めましょう。
医療費通知に載っていない医療費関しては、領収書などを確認しながら申告漏れがないようにしましょう。
また交通費などの病院の医療費以外に関しては、その他の医療費にチェックを入れます。
これらをすべて計算式通りに進めていけば完成します。
手書きでは面倒・計算が難しいという人は、国税庁のホームページにある「医療費計算フォーム」を活用する事で手間を省くことができます。
これを活用する事をおすすめします。
確定申告には手間と時間がかかりますが、計算フォームを利用することで時間や手間を省くことができます。日
頃から計算フォームに入力しておくと、確定申告の時期に慌てずにすみます。
通院のタクシー代を適切に申告して負担を軽減しよう
通院のタクシー代と医療保険についてお話してきました。
公的医療保険制度でも医療費控除でも、基本的にタクシーの利用が必要と医師が判断された場合のみ、対象となります。
誰でもどのような状況でも対象となるわけではないことをしっかりと理解しておきましょう。
タクシー代を医療費控除として申告する場合には、様々な条件をクリアして確定申告を行う必要があります。
少々手間がかかってしまいますが、適切に申告し少しでも負担を減らせるようにしてみてはいかがでしょうか。